中国から台湾に移った国民党政権が、多数の住民らを虐殺した1947年の「2・28事件」で、漁師だった父を失った浦添市の青山惠昭さん(72)が、台湾政府に損害賠償を求めた訴訟の判決で、台北高等行政法院(裁判所)は17日、政府側に600万台湾元(約2千万円)の支払いを命じた。政府側は上訴するか検討中だが、支払いが決まれば同事件で外国人が補償を受ける初めてのケースとなる。
同事件は、国民党の専制支配や台湾人差別が原因で起こった住民と政府の衝突で、2万人以上の死者が出たとされる。
国民党独裁政権下で長くタブー視されてきたが、政府は民主化の進展に伴い90年代以降、真相究明や補償を進めている。
青山さんは2013年に台湾政府の委託を受けた基金会に父への賠償を申請。事件で失踪したことは認められたが、政府は「慰安婦」など戦争中の台湾人に対する賠償請求に日本政府が応じていないことなどを理由に、昨年7月に却下。青山さんはこれを不服として、同年9月に提訴していた。
判決は、青山さんの父を事件の失踪者として認めた以上、政府は賠償に応じるべきだとした。600万台湾元の補償は、基金会の規定では最高額になる。
青山さんは「事件から69年間、台湾の天空をさまよっていた父の喜びはいかばかりか。やっと胸が晴れた」と喜びを語った。
[ことば]2・28事件とは
日本の敗戦後の1947年2月28日に、台湾を接収した国民党政権が住民の抗議行動を武力弾圧した事件。死者は2万人余とされるが、国民党独裁時代は事件はタブー視されたため、今も謎が残る。しかし、民主化に伴い95年に当時の李登輝総統が公式に謝罪。以降、真相究明や補償が進んでいる。台湾228事件沖縄調査委員会によると、県出身犠牲者は4人。