社説

社説[自然遺産 登録延期]IUCNからの警鐘だ

2018年5月6日 08:57

 予想外の勧告だった。

 なぜ、そうなったのか。指摘された問題点を注意深く検証し、対応していく必要がある。

 政府が世界自然遺産に推薦した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について、国際自然保護連合(IUCN)は、登録を延期するよう国連教育科学文化機関(ユネスコ)に勧告した。

 IUCNは何を問題にしたのか。

 政府は昨年2月、鹿児島・沖縄両県にまたがる陸域約3万8千ヘクタールを、「生態系」と「生物多様性」の二つの登録基準に沿って推薦した。

 だが、ユネスコの諮問機関であるIUCNの評価はいたって厳しいものだった。

 推薦された四つの地域は24区域に細かく分断され、本島北部などでは飛び地も多い。 このような状態では、生態系の持続可能性に「重大な懸念」があり、「評価基準に合致しない」と厳しい判断を示した。

 政府の見通しの甘さが「登録延期」の勧告を招いてしまったのは明らかである。

 IUCNは、過去4回にわたって、「ジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナの保全」や、外来種の侵入防止対策の強化などを勧告・決議している。

 県や名護市、県内の自然保護団体からは「自然遺産の範囲が不適切であり、やんばるの森全域に拡大すべきである」などの要請を受けてきた。

 IUCNの「登録延期」の勧告は、こうしたいきさつを踏まえた「警鐘」だと受け止めたほうがいい。

■    ■

 IUCNは、世界自然遺産登録に「ノー」といっているわけではない。

 「生物多様性」については、絶滅危惧種や固有種などの貴重な生き物が数多く生息していることを高く評価し、対象区域の見直しによって「基準に合致する可能性がある」とも指摘している。

 北部訓練場の返還跡地を推薦地に加えるよう助言しているが、その前に返還跡地全域の丁寧な調査と汚染源の除去作業が必要だ。

 地位協定によって米軍には原状回復の義務がなく、返還跡地では訓練弾やドラム缶、タイヤなど多数の廃棄物が見つかっているのだから。

 世界自然遺産と北部訓練場でのオスプレイの訓練は基本的に両立しない。

 本来、北部訓練場の全面返還が望ましいが、それができないのであれば、生物多様性の保全に向けた共同管理を米軍に働きかけることも検討すべきだろう。

■    ■

 勧告は、主要な観光地域における適切な観光管理にも触れている。西表島で危惧されるのは、遺産登録に伴う観光客の急増だ。保全と利用のルールをどう作っていくか。自然遺産の登録に向け、取り組むべき課題は山積している。

 6月下旬から7月上旬にかけてバーレーンで開かれる世界遺産委員会で、登録するかどうかの最終的な判断が示される。

 その結果を待つのではなく、いずれ登録されるという前提で、ルール作りと受け皿整備を急ぎたい。

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