表現の自由や情報公開などに力を入れる個人・団体をたたえる一般社団法人「日隅一雄・情報流通促進基金」(東京都)は10日までに、「第6回日隅一雄賞」奨励賞に沖縄タイムス北部報道部長の阿部岳記者(44)を選んだ。6月13日に都内で表彰式がある。
阿部記者は、高江ヘリパッド問題を中心にした「ルポ沖縄 国家の暴力」(朝日新聞出版)を執筆。政府がヘリパッド建設に着手した2016年7月から「完成」式典があった12月までの期間を「復帰後、最悪の165日間」と表現し、本土機動隊員の大量派遣や「土人」発言、記者拘束問題などを取り上げた。
同基金は、受賞理由として米軍基地を巡る報道と執筆活動を挙げ「沖縄の現場の状況を精力的に取材し、全国に発信した」と評価した。
阿部記者は「高江の山奥に封じ込められていた国家の暴力の実態を、特に本土の人々に伝えたくて本を書いた。本土側で評価していただいたことはとても光栄で、励まされる」と話した。
同基金は沖縄密約文書公開に携わり、福島第1原発事故後は国の情報隠蔽を追及し、12年に49歳で亡くなった日隅一雄弁護士の理念を世に生かそうと創設された。