「『頑張れ』という言葉が大嫌いでした」。宮城県石巻市の鈴木啓史さんは高校1年の時に東日本大震災で被災した。月刊文芸春秋の4月臨時増刊号「つなみ 5年後の子どもたちの作文集」で当時の思いをつづった
▼「頑張ろう石巻と言われても何を頑張ったらいいのか分からない毎日でした。家も無く金も無く、この避難所に居て何を頑張れるのだろう…」と吐露した
▼家族のために高校を退学し、仕事することを選んだ。昨年10月に結婚。今では「当たり前のことを当たり前と思わず、ありがたいと思い毎日を過ごせること」に感謝しているという
▼「つなみ」は震災後3カ月で発刊された「つなみ 被災地のこども80人の作文集」の続刊。前作の約120人のうち、9~22歳に成長した57人が再び文章を寄せた。震災を振り返り、多くの出会いや体験で揺れる心を訴える
▼津波で自宅を失った宮城県名取市の高校2年の橋浦優香さんは「記憶でしか残すことができないのに、年月が経(た)つ度に少しずつ忘れていくのが何より悲しく、悔しい」と記した
▼夢を実現している子もいる。編集したジャーナリストの森健さんは「次の5年後、復興を目指す若者はもっと増えるだろう。そんな萌芽(ほうが)がもう彼らの作文の中に宿っている」と期待する。東北の復興と共に成長する若者たちを応援したい。(与那原良彦)