「これだけたくさんの人が集まる抗議集会が、整然と開かれていることに驚いた。本国ではこうはいかない」
▼1995年の米兵による暴行事件直後の県民集会を取材していた英国の記者に逆取材をかけたら、こんな言葉が返ってきた。その後も続く非暴力の抗議では沖縄の怒りが米軍に通用しないのか、そんな思いに駆られる事件がまた起きた
▼那覇市内のホテルで、県外から観光に来ていた40代の女性に暴行したとしてキャンプ・シュワブ所属の米海軍1等水兵の男(24)が一昨日、準強姦(ごうかん)の疑いで逮捕された。那覇署によると男は容疑を否認している
▼容疑が事実だとすれば、安全が確保されているはずのホテル内で事件は起きた。米軍基地とは縁遠い県外から来た観光客にも被害が及んでしまった。「平和産業」である沖縄観光をも揺るがしかねない事態である
▼米軍基地あるゆえに沖縄観光が減速した例が過去にある。15年半前の米同時多発テロでは約25万人が沖縄観光をキャンセル。当時の本紙アンケートでは観光関連企業の88%が売り上げを減らすと回答していた
▼観光立県であることは、経済も米軍基地の影響を免れないし、被害者は県をまたぎ広がることを意味する。事件で、基地問題は沖縄だけの問題ではないと県外の人が気付くとしたら、これほど気の重い話はない。(与那嶺一枝)