人気のNHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」で、主人公あさが驚いたときに発する「びっくりぽん」。独特の言い回しは画面を明るくする
▼もう一つ、印象的なせりふは「いいや」。わずか3音に強い意志が宿っている。あさは実在のモデル広岡浅子のように、明治期に事業を興しながら娘を出産。逆境の中で日本初の女子大学校(大学)を設立させた。あさなら何と思うだろうか
▼「女性にとって最も大切なことは子どもを2人以上産むことで、仕事でキャリアを積む以上に価値がある。子育てをした後に大学で学べばよい」などという発言のことだ。大阪市立茨田(まった)北中の寺井寿男校長(61)が全校集会で話し、波紋を呼んでいる
▼教育委員会は「軽率な発言」として処分を検討しているが、寺井校長は間違ったことは言っていないとの認識だという
▼「産めよ」発言はこれまでも政治家らが繰り返し、その都度、批判されてきた。子を産む、産まないは基本的に本人の自由意思で、子を持ちたくても持てない女性にとって心ない発言だからだ。今回は大学進学も後回しと一段と差別的である
▼国を思って少子化を憂える方々のこうした発言は女性の反発を招いても、少子化の歯止めにつながらない。幕末生まれのあさでも「びっくりぽん」と目を丸くして「いいや」と否定するだろう。(与那嶺一枝)