社説

社説[高齢ドライバー対策]返納と支援の両面から

2018年6月10日 08:57

 改正道交法施行後の1年間で、「認知症の恐れがある」と判定された高齢ドライバーが全国で5万7千人余りに上ったことが明らかになった。

 高齢化の進展に伴い、75歳以上の運転免許保有者は今後さらに増える見込みだ。運転をやめた後の移動手段の確保と安全に運転を続けるための支援の両面から対策を急ぐ必要がある。

 昨年3月に施行された改正法では75歳以上の認知機能検査が強化され、免許更新時に認知症の恐れがあると判定された場合、医師の診察が義務付けられた。

 警察庁の発表によると5万7千人余りのうち、自主返納した人などを除く約1万6千人が医師の診断を受け、その結果、1892人が免許取り消しや停止処分となった。施行前の約3倍である。

 改正法には、大事故につながりかねない症状の進行を早期に把握し、被害を防ぐ狙いがある。 

 しかし昨年、死亡事故を起こした高齢ドライバー385人のうち、認知症の恐れがあるに分類されたのは7%。残りは医師の診断を必要としない「認知機能低下の恐れがある」「認知機能低下の恐れなし」だった。

 先月末、神奈川県茅ケ崎市で赤信号の交差点に進入し横断中の4人をはねて死傷させた90歳の女性も、最近受けた検査で問題はなかったという。

 年を取ることによる視力や判断力の低下は避けられない。検査にパスしたからといって運転技術に対する過信は禁物だ。

■    ■

 75歳以上による免許証の自主返納は昨年25万件を超え、過去最多となった。

 事故防止への理解や自治体の取り組みの広がりが背景にあるが、バス、鉄道といった公共交通機関が発達していない地域では、手放そうにも手放せない高齢者が多い。

 特に地方では免許返納が生活範囲を狭め、仕事や社会参加に大きな影響を与えるからだ。

 車に代わる生活の足をどのように維持するのか。

 県内で進められているバスの自動運転実証実験は、離島などの移動弱者対策の側面がある。那覇市真和志地域で導入されている乗合タクシーは、公共交通の空白を埋める役割が期待されている。

 さらに公共交通料金の引き下げ、病院などへの送迎サービスの充実を求める声は大きく、地域の事情に合わせた移動手段の確保にもっと知恵を出し合う必要がある。

■    ■

 免許返納だけが、事故を減らす取り組みではない。

 注目したいのは警察庁が検討を始めた「限定条件付き免許」。高齢ドライバー対策として運転できる地域や時間帯のほか、安全機能を備えた車など車種を絞ろうというものだ。

 場所や時間を制限する限定免許は既にヨーロッパで導入されている。スーパーや病院への往復などエリアを限り、夜間の運転を控えることで事故のリスクは減らせる。

 返納とは別に、運転免許継続支援にも力を入れてもらいたい。

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