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高校野球のニュータイプ、強豪興南倒した「ゆるふわ」感 注目のKBC未来沖縄とは?

2018年6月21日 12:30

 2018年4月3日、夏の高校野球のシード権をかけた第65回県春季大会の決勝が行われた。甲子園で春夏連覇を果たしたこともある強豪・興南高校を下したのは、創部4年目のKBC学園未来沖縄だった。いわゆる、伝統校ではない新設の私立高校が沖縄の春を制した。
 一体、どんな高校なのか。

創部4年目で県春季大会を制したKBC学園未来沖縄の選手たち=2018年4月3日、北谷球場


▼ゆったり、ほんわか

 6月19日午後3時、糸満市内のグラウンド。3年生15人、2年生16人、1年生5人、合計36人の野球部員がフリーバッティング、ティーバッティングなど、グループに分かれて練習していた。

 それにしても静かだ。
 バットにボールが当たる音がやけに響く。
 部員同士は談笑しながら、バッティングの順番を待っている。
 移動する足取りもゆったり。
 夏の予選があと5日に迫っているとは思えないほどの“ゆるふわ”感だ。

 神山昂監督は「本当におとなしいチーム。ニコニコしながら野球しているからね。声を出せといっても『はーい、出してまーす』と言う。入学したころは隊列を作って、1,2,3,4の掛け声を出して走ることもできなかった」と笑う。

 監督の息子でコーチの神山剛史部長も「今年の3年生はほんわかしていて、楽しそうに野球をやっている。でも、試合になると一気にモードが変わるし、試合に勝つ心得はよく知っている。今は公式戦が近いので、2時間程度に練習は抑えています」と説明した。


▼進学理由

 神山監督は、沖縄県勢として初めて、甲子園で準優勝した沖縄水産高校の栽弘義監督の下で経験を積んだ。1994年には那覇商業高校を初めて甲子園出場に導いた実績もある。定年退職後の2015年、同校の監督に就任した。

神山昂監督

 部員は県内各地から集まっている。部員の確保にも奔走しているが、かつての教え子たちが、子や孫を神山監督に託すケースも多いという。中には、強豪の伝統校からの誘いを断って進学した部員もいる。

 部員に進学理由を聞いてみた。
 「若いチームで甲子園に行けたら面白いと思った」
 「型にはまらない、のびのびとした野球ができると聞いたから」
 「好きな野球をたっぷりできるし、勉強も十分にできるから」

 そんな彼らを神山監督は大事に育ててきた。
 「げんこつありき、激しい指導は過去の話。『これはするな』『走れ』と厳しくやっていた時期もある。でも今は、本人がやろうとしていることを摘み取らないように、個性を生かすことを大事にしている。言ったことも忘れるから、何度も言い続ける。ほめるときはほめる。ダメなときはダメだと言葉で説明する」

監督が常に持ち歩いているノート。気づいたことがあればすぐにメモをする

 「今までの監督のやり方ではないですねと言われることもあるが、時代が変われば、指導法も変わる。男子はあまり厳しくすると成功しない。自分に何が足りないのか、本人たちがよく分かっている。だから、自主練の内容も自分で考えるし、監督やコーチも細かく指導する。本人たちのやりたい練習をさせてあげたら勝てる雰囲気ができてくる」

▼野球部の1日

 KBC学園未来沖縄は、専門学校を運営する学校法人KBC学園が母体だ。
 2007年、同学園の専門学校の一つである「インターナショナルデザインアカデミー(IDA)」に高等課程を設置し、2012年には愛媛県の広域通信制高校である「未来高等学校」とも連携した。
 年間12日通う「通信制」と毎日通う「総合学科」に分かれているのが特徴。午前中は、未来高校が実施する国語や数学などの授業、午後はIDAの授業を受けることができる。

 総合学科は、ゲームやVRなどの開発をする「デジタルクリエーションコース」、簿記やパソコンなどを学ぶ「キャリアデザインコース」がある。
 そして「スポーツコース」は、2015年に設立した。それまで、スポーツができるコースがなかったため、職員の中から甲子園を目指してはどうかと声が上がったことが始まりだ。2018年現在、野球専攻とサッカー専攻がある。

 野球部員はもちろん、全員が野球専攻に在籍。「沖縄県で優勝し甲子園で勝つ」を目標に掲げる。

 


 午前9時に授業が始まり、午後0時10分に3時間目が終わると、学校のある那覇から学校のバスで糸満市内のグラウンドに移動する。車中では、部員のお気に入りの曲、湘南乃風の「炎天下」やORANGE RANGEの「祭男爵」を熱唱したりして、テンションを上げる。

 昼食も車中だ。全員が白米が2キロ入るタッパーに入った弁当を食べる。練習が終われば、全員が保護者から差し入れてもらうパンを食べる。3年生は全員、入学してから体重が約10キロ増えた。
 キャプテンの平良光さんは「体が大きくならないとそもそも強くなれないから」と説明する。

 練習は午後1時から6時ごろまで。その後、自主練習をする部員もいれば、ジムで筋肉トレーニングをする部員もいる。野球専攻は卒業までに7つの資格を取得する目標を掲げているため、学校に戻って英検などの勉強に励む部員もいる。
   3月に卒業した1期生は、ほぼ全員が大学に進学し、ハワイや台湾に留学したメンバーも。

 月曜日は授業が6時間目まであるため、練習は休み。土日は主に練習試合で、野球一色の高校生活だ。


▼部員が強さの秘訣を分析

 平良さんは、強くなった要因の一つに暑さ対策を挙げる。

平良光主将

 「まず、練習時間が午後1時スタート。沖縄の日差しがとても強い時間帯で、入学したばかりの時は、立っているだけでアンダーウエアの袖口から汗が流れてきた。さすがに3年間持たないかもしれないと正直、思った。でも、だんだん慣れてきて、沖縄の日中の試合でも暑さは気にせずに臨むことができている」

 4番で投手としても活躍する宜保翔さんは、1年生大会では優勝したが、その後の夏の予選で敗退したことが転機になったという。

 「2年連続で甲子園に行こうと意気込んでいたけれど、負けてからは、考えを変えないと勝てないし、通用しないと思った。練習メニューの組み方、筋トレの仕方も自分たちで考えて、先生たちに伝えていかないと『最低でも甲子園』はかなわないと思った」
 トレーニングの仕方や栄養面、配球の方法など、監督に本を借りたり、自分で調べたりして、メニューを組んでいる。

宜保翔さん

 
 平良さんは「結局、個人個人でしっかり練習をしている。自分でダメなところがわからない時は、コーチや監督、チームメイトに聞いている。キャプテンとしては、とても楽ですよ。緊張もしないので、試合でものびのびできて、野球がとにかく楽しい」と話す。
 「新しい学校で応援が少ない分、対戦チームの応援も、自分たちの応援のように聞こえるようになってきた。それも強さの一つかもしれない」。

 3年の新里義毅さんは、片道約1時間以上かけて自転車で通学し、学校生活を送ってきた。「入学してから、野球に集中できる毎日だった。部員同士、仲が良くて、雰囲気もいい。今、甲子園に一番近いと思っている」


 2018年6月23日、全国のトップを切って、高校野球の「第100回全国高校野球選手権大会」の地方大会が沖縄で始まる。
 同校の試合は24日、午前11時半からアトムホームスタジアム宜野湾で。

 まもなく、プレイボール。


(デジタル部・與那覇里子)
 

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