「選挙は人選が8割だ」を持論とするベテラン政治家がいた。分裂選挙で苦い思いをした経験を語りながら、候補者調整の難しさを何度も説いていた
▼候補者は意欲や人柄、経歴はもちろんだが、出身地や人脈、支持団体の意向、あるいは沖縄ならではの郷友会や門中とのかかわりなどあらゆる側面を考慮に入れて選ばれる。人選のしこりは、選挙戦以降も尾を引く場合が少なくない。ベテラン政治家はいう。「立てるより、降ろすことが何十倍も大変」
▼県内政局の分水嶺に位置付けられる県議選が投開票まで2カ月を切った。県政への審判ともなる選挙で、翁長雄志知事らが与党議席の過半数獲得に向けた立候補予定者の調整に乗り出した
▼与党内で分裂の危機にあった宮古島選挙区で候補者を一本化。名護市区では体調に不安を抱えるベテランの玉城義和氏に勇退を促し、玉城氏は後進に道を譲ることを決意した
▼名護市辺野古への新基地建設をめぐって国と対峙(たいじ)する翁長知事の県政運営で県議会の多数を握る与党の存在はなくてはならない。「オール沖縄」の結束を崩すなという大義名分が困難な調整を動かした
▼県政の課題だけではなく、安倍政権の沖縄に対する姿勢も評価される。70人近いの立候補予定者がほぼ出そろう中、6月5日の投開票日に向け攻防が激しくなる。(与那原良彦)