タイムス×クロス 平安名純代の想い風

辺野古埋め立ての承認撤回、迫るリミット 決意表明はもういらない

2018年7月11日 10:00
平安名 純代
平安名 純代(へいあんな すみよ)
沖縄タイムス米国特約記者

沖縄県那覇市出身。1995年渡米。日英両語のロサンゼルス日系紙「羅府新報」でカリフォルニア州議会やロサンゼルス市議会などの担当を経た後に副編集長。2010年12月から現職。米軍普天間飛行場の移設問題をめぐるラムズフェルド元国防長官との単独会見などの一連の取材で12年に第16回新聞労連ジャーナリスト大賞優秀賞を受賞。

 感情は人を動かすが、感情に訴えるだけでは動かせない物もある。

護岸工事が進むキャンプ・シュワブ沿岸=5月30日、名護市辺野古

 6月28日、米サンフランシスコの連邦地裁で沖縄ジュゴン訴訟を傍聴した。

 絶滅危惧種ジュゴンを守ろうと、沖縄の住民や日米の環境保護団体などが米国防総省を相手取り2003年に提訴。一度は門前払いとなったが、再び挑んだ勝負で差し戻しを勝ち取り、初の実質審理で国防総省をさらに追い込んだ。

 閉廷後、傍聴席を埋めた約60人が笑顔で抱き合う中、私が考えていたのは国防総省はなぜ埋め立て承認の有効性を強調し、自身に有利な展開を試みなかったのかという点だった。

 複数の米政府関係者に取材を試みたが誰も応じてくれない。何度も拒否されながら、「政府とは関係のない私個人の考え」と話してくれた何人かのコメントをまとめると、例えば裁判で「埋め立て承認は現在も有効だ。沖縄も同意している」と主張した後に翁長雄志知事が撤回したら、それこそ不利な展開となりかねないと検討したらしいことが浮かび上がってきた。

 裏を返せば、結審前に翁長知事が撤回していたら、事は沖縄側に有利に運んでいた可能性があったということだろう。

 マティス国防長官に近い同省高官に聞くと、原告(住民)側のサラ・バート弁護士の健闘ぶりをたたえた後、「もうすぐ埋め立てが始まる。懸念することは何もない」と余裕をうかがわせた。

 「もうすぐ始まる埋め立て」とは来月17日以降に予定されている土砂投入のことだ。海にいったん土砂が投入されてしまえば、原状回復はほぼ不可能となる。よって、県がそれ以降に撤回しても法廷闘争で勝つ見込みはなく、ジュゴン訴訟の判決も日本側の事情を踏まえたものとなる可能性があるのだそうだ。

 ジュゴン訴訟に関わる原告らはこうした危機意識を共有するが、県の認識はまるで違う。

 池田竹州知事公室長は6月28日の県議会で「公水法に基づく埋め立て承認がいま生きているので、それ(土砂投入)だけでは看過できない事態になるか判断できない」と答弁。翁長知事は7日の県民集会に寄せたメッセージで「必ず撤回を決断する」と繰り返した。

 米国の司法制度の下で沖縄に対する環境差別に異を唱え、正義を問う沖縄ジュゴン訴訟は、新基地建設を止めうる唯一のカードになり得るかもしれないが、知事が土砂投入前に撤回しなければ、それすら失ってしまうかもしれない。

 決意表明はもういらない。私たちが翁長知事から聞きたいのは「撤回しました」という表明だ。土砂投入は来月17日以降。時間はもうない。(平安名純代・米国特約記者)

沖縄県知事 翁長雄志の「言葉」

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