全国的なブレーク直前、那覇市のショッピングセンターの舞台で歌って踊る16歳の安室奈美恵さん(40)に魅了されたのは小学3年の時。「衝撃的なかわいさでした」。那覇市の佐々木そよ香さん(33)は目を輝かせて語る。あれから四半世紀、難病の娘を育てる母となった今も、佐々木さんにとって安室さんはその楽曲や生き方で、一歩踏み出す勇気をくれるかけがえのないスターであり続ける。安室さんの引退まで2カ月を切った。(社会部・新垣綾子)

長女りん香ちゃん(左)を抱く佐々木そよ香さん。「胎教音楽もずっと、安室ちゃんの曲でした」と話す=沖縄タイムス社

長女りん香ちゃん(左)を抱く佐々木そよ香さん。「胎教音楽もずっと、安室ちゃんの曲でした」と話す=沖縄タイムス社

長女りん香ちゃん(左)を抱く佐々木そよ香さん。「胎教音楽もずっと、安室ちゃんの曲でした」と話す=沖縄タイムス社 長女りん香ちゃん(左)を抱く佐々木そよ香さん。「胎教音楽もずっと、安室ちゃんの曲でした」と話す=沖縄タイムス社

 第3子として授かった佐々木さんの長女りん香ちゃん(3)は生まれた直後からミルクの飲みが悪く、笑顔や泣き声もなかった。難治性てんかんの診断を受けたのは生後3カ月の頃。成長しても歩いたり話したりできない-。直面した現実に落ち込み「私のせいでこうなった」と涙を流す日々だった。

 そんな時、ふと耳にしたのが安室さんのバラード「Baby Don’t Cry」。〈ねえ良くなる方に捉えたら? いつか笑って話せる日がくるから〉。かつては恋愛に重ねたお気に入りの曲が、今度は子育ての不安を和らげ「安室ちゃんが言うなら、頑張ってみよう」と思わせてくれた。

 りん香ちゃんは現在、訪問看護師や児童デイサービスを利用しながら在宅で生活。鼻から管で栄養を送り、時には呼吸器を装着する医療的ケアが必要だ。佐々木さんは「この1年でりん香が泣いたり、甘えたりするようになった。ささいなことがわが家にとっては大きな一歩」と成長をかみ締める。

 昨年2月には、看護師や家族にりん香ちゃんを託して沖縄での安室さんのライブを堪能、また元気をもらった。

 6月のテレビ番組。安室さんは一人息子への思いを「ママの息子で良かったと言われるには、どういう仕事をしていけばいいのかを考えてやってきた」と語った。佐々木さんも「りん香のおかげでたくさんの出会いがあり、世界が広がった。3人の子どもたちに私が母親で良かったと思われるよう、毎日を大切に過ごしたい」とうなずく。

 週1回、障害児施設に通うりん香ちゃんは、そこで受けるリハビリが苦手。口から食べたり、首を持ち上げたりする訓練が始まると「たぬき寝入り」をしてしまうという。朝、施設に向かう車内。母は子に「さあ、りんちゃん、今日も行くぞ」と気合を入れる。カーオーディオの音量を上げると、安室さんが〈だってそうして人は何度でも 闇に立ち向かう強さあるはず〉と2人の背中を押す。