2019年度予算の概算要求で、防衛省は防衛費について過去最大となる5兆3千億円近くを計上する。厳しい財政事情にもかかわらず、安倍政権になって6年連続で防衛費は増え続け、過去最大の更新も4年連続となった。

 その中で注目されているのが、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア(陸上イージス)」である。北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威を訴えて政府が昨年末に導入を決定。秋田市と山口県萩市に計2基の配備を計画している。

 小野寺五典防衛相が、陸上イージスの取得経費の見通しを明らかにした。当初は1基あたり800億円の想定だったが、1340億円と1・7倍となり、2基で2680億円に大幅アップすると発表した。導入後の維持・運用費を合わせると30年間で総額4664億円かかると説明した。

 しかしこの見通しには、土地造成や施設整備の費用は含まれていない。さらに、日米共同開発の迎撃ミサイルの経費も入っていない。同省筋によるとミサイルは1発約40億円。1基に24発を搭載する考えで、2基で計1920億円となる。経費はさらにかさんでくる。

 陸上イージスの購入は、米国が価格や納期を主導して交渉する米政府の有償軍事援助(FMS)に基づく。米側の提示を受け入れなければ導入できない仕組みで、米政府次第では今の想定よりさらに増える恐れもある。

 巨費を要する事業を、このまま導入ありきで進めるのは拙速だ。導入の是非を含め計画を再考すべきである。

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 導入の大義名分となった北朝鮮の脅威についても、昨年とは事情が変化している。

 4月の南北首脳会談、6月の米朝首脳会談を経て、朝鮮半島の完全非核化が目指されるなど、東アジア情勢は新たな段階に入った。

 小野寺防衛相が言うように、「北朝鮮の核・ミサイル廃棄は進んでいない」のは事実だが、一方で、政府はミサイル発射に備えるイージス艦の日本海での常時展開を取りやめ、北海道や中国、四国に展開した地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の部隊を撤収させた。

 他方、自衛隊によるミサイル迎撃を可能とする破壊措置命令は継続したままである。

 朝鮮半島情勢が緩和してから、防衛省の対応はちぐはぐになっている。北朝鮮の動きは予断を許さないが、だからといって、昨年の決定に固執するのは短絡的ではないか。膨れ上がるコスト面を含め、国民の理解は得られまい。

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 政府は陸上イージスの配備時期について、米側製造元の事情で、当初の23年度から25年度以降へ先延ばしになることも明らかにしている。その時に北朝鮮情勢は果たしてどうなっているのか。仮に、再び脅威が高まっていたとして、巨費投入に見合った効果が得られるかは疑問だ。

 政府の真の狙いは中国への備えともいわれる。歯止めのない防衛費増加と装備強化が、近隣諸国の軍拡に作用しないか。冷静に分析しながら、議論を尽くす必要がある。