死を迎えた人を見送る現場には、さまざまな仕事が存在する。その代表格が葬儀社だ。臨終から通夜、火葬、葬儀・告別式、納骨まで、約2日間にわたる葬送儀式をスムーズに執り行うには、葬儀社のサポートは欠かせない。そこで「納得のお式」を挙げたい人に活用してほしいのが葬儀の事前相談だ。以前であれば不謹慎とされていたが、近年の終活ブームを背景に、自分のためにも、残される家族のためにも事前相談をする人が増えている。誰しも避けては通れない最期のとき。予算、規模、式の流れなど、不安だらけのお葬式を安心のお葬式に変える有効手段が事前相談だ。今回は葬儀の現場を支える3人の女性たちに話を聞いた。家族が集まる旧盆シーズン。家族にとっての理想のカタチを話し合う機会にしてみては?

 
 

①いなんせ典礼 ホールスタッフの川瀨佳乃さん 「元気なうちに」生前契約が増加している

 浦添市伊奈武瀬にある葬祭ホール「いなんせ会館」を運営する葬儀社「いなんせ典礼」のホールスタッフとして、お式の誘導や司会進行などを担当する川瀨佳乃さん(29)=嘉手納町出身。入社して4年。この業界に興味を持ったのは10年前に経験した祖母の葬儀がきっかけだった。

「いなんせ典礼」ホールスタッフ 川瀨佳乃さん

 「身近な人の死は祖母が初めてで、初めてのお葬式でした。その葬儀がステキで、人の最期にかかわる仕事に興味を持つようになりました」。ホール担当は、まずスムーズな式の進行がミッション。「自分の足音がうるさくないか、声のトーンなどもご遺族に不快な思いをさせていないか、常に気は抜けません」

 この仕事に就き、初めて知ったのは、本土に比べ沖縄の骨壺はサイズが大きいということ。「お遺骨を全て持って帰るという思想は沖縄独特の家族観ですね」

 近年、沖縄でも葬儀の簡略化が進む傾向にある。家族葬や火葬後の式を省き納骨する「出棺葬」も徐々に増えてきているという。一方で、親戚や知人へ告知が十分でなかったために、四十九日まで自宅の弔問客の対応に追われ、香典返しが必要になるケースも多々あるという。「結果的にご家族の負担が増えることもありますので、葬儀を簡略化する場合は十分検討し、周囲へのお知らせをしっかりしておく必要があります」

 自身の体験からも「告別式は残された家族にとっては心の整理、悲しみから次へ進むための区切り。社会的には地域など、故人にかかわるすべての方々へこれまでのお礼を伝える場」と感じているそうだ。

 同社でも葬儀の事前相談が増えている。その数、年間500件超。親世代の相談や、本人の生前契約もあるという。「気に入った祭壇や棺を選んだり、終活という言葉が浸透して以降、元気なうちに決めたいという方が増えていますね」

 「裏方の仕事がメインですが、つつがなく式を終え、ご家族からありがとうと声をかけられると、うれしいです」。故人を偲ぶ空間で、家族がゆっくりお別れの時間を過ごせるようなサポートを心がけている。

【地域で違う骨壺のサイズ】本土と沖縄では使う骨壺のサイズが異なる。主に西日本を中心に、火葬後、主要な遺骨(足・腰・胸・腕・のど仏・頭)のみを収める「部分収骨」の地域は3~5寸サイズ。沖縄のように遺骨を全て収める「総収骨」の地域では7寸サイズの骨壺を使っている。

②拓商1級葬祭ディレクター真玉橋恭子さん 「本人・家族の理想を共有してほしい」

 創業45年、本島・久米島に計5カ所の拠点を持つ「拓商」(本社・那覇市)。一般葬から県民葬まで、これまでに2万件以上の実績を持つ老舗だ。入社して9年、「1級葬祭ディレクター」として活躍している真玉橋恭子さん(29)。全葬連加盟の県内葬儀社の中でも女性初の有資格者だ。

「拓商」1級葬祭ディレクター真玉橋恭子さん

 臨終から納骨までの葬送儀礼は残された家族にとって、大切な人を失った喪失感に浸る間もないまま、慌ただしく進むことが多い。そのさなかでも家族の要望を丁寧に聞き出し、できる限り対応して希望の式をかなえるのが、葬祭ディレクターの腕の見せ所だ。

 二十歳のころ、映画「おくりびと」に憧れ、パン屋勤務からこの業界へ転職を決めた。看護師を目指していた時期もあったといい、「人の役に立ちたいという思いが根底にあった」と語る。ディレクターになって1年。地域の独特な葬送儀礼など「学ぶことはまだまだ多いです」。南部エリアは門中墓が多く、今でも葬儀翌日にお墓参りをする「ナーチャミー」という文化が残っている。そこで使う紅白旗を準備し、海岸での別れの儀式までつきあうことも多い。「年忌法要など、その後も長いお付き合いをしたいと思っています」

 同社でも60~70代の事前相談が増えている。その大半が子世帯の負担を考えた相談だ。しかし、いざ葬儀の時、本人が小規模な家族葬を希望していても、家族が告別式に切り替えることもあるという。その逆パターンで葬儀を簡略化したために、お別れができなかった親戚などともめるケースもある。真玉橋さんは「行き違いを防ぎ、良いお式にするためにも生前に希望を伝え、その上でお世話になった方々への告知が必要か否か考える必要がある」と語る。費用面から家族葬を選択する場合でも「告別式プランもいろいろあるので、まずは事前相談してほしい」と呼びかけている。

【ナーチャミー】沖縄の古いしきたりで、葬式の翌日のお墓参りのことを「ナーチャミー」と呼ぶ。火葬のない時代、死者の生き返り(グソームドゥイ)を確認するための儀式。葬式の翌朝の早い時間に、ナーチャミーを行った。現在は死者との別れを惜しみ、見舞う意味で儀式を行う地域がある。

③公益社 湯灌師・送り化粧スタッフ 源元成子さん 「希望を整理して、葬儀社の情報を集めておく」

 「湯灌師」(ゆかんし)という職業をご存じだろうか? 豊見城市、浦添市にセレモニーホールを展開する「公益社」(本社・豊見城市)で、同社初の「湯灌師」として故人のお見送りに携わる源元成子さん(52)。納棺の前に、故人の身を清め、送り化粧を施し、身支度を整えるのが主な仕事だ。

「公益社」湯灌師・送り化粧スタッフ 源元成子さん

 湯灌師を志したきっかけは父親の死だった。「怖くて触れられず、ひげをそってあげることも、体を拭いてあげることもできなかった」。これが悔いとなり、人の最期にかかわる仕事に就こうと決心。勤めていた生花店をやめ、湯灌の専門会社で経験を積み、同社に入社して14年になる。

 湯灌は沖縄では「アミチュージ」と言い、故人の現世での苦しみを洗い流し、きれいな体で旅立たせたいという思いが込められている。家族の代わりにその作業を湯灌師が担う。しかし「沖縄は家族への愛情が深く、作業の参加を希望する方も多いですよ」と語る。

 専用の浴槽を運び入れ、洗う場合も裸の姿をさらさないよう布をかぶせ、一連の作業をその下で行う。家族には故人が愛用していたシャンプーなどを持って来てもらい、自然な血色に見えるよう化粧を施す。「ご家族にとってはこの過程を通して死を受け止め、心の整理になるのでしょう」

 印象に残っているのは、着たい着物や洋服、遺影をお嫁さんに託し、旅立たれたあるご婦人の告別式。「元気なうちに伝えておけば、ご家族も慌てなくて済みますよね」

 一方で核家族化、単身世帯など、地域のつながりが薄くなっている現代。自分の最期に不安を覚える人も少なくない。源元さんは「式のイメージ、不安や要望に応えられる葬儀社を探しておくことが大事」と話す。エンディングノートも「時間がたつと気持ちが変わることもあるので、定期的に見直し、ご希望を事前に相談してほしい」と呼びかけている。