敬意を払う、の意味の英単語「リスペクト」は日本語として定着した感がある。広辞苑第7版では新たなカタカナ語として追加された

▼この単語を社会的メッセージに高めた最初の人かもしれない。「ソウルの女王」と呼ばれた米国の黒人歌手、アレサ・フランクリンさんが76歳で死去した。1967年の全米1位のヒット曲「リスペクト」は、黒人差別撤廃を訴える公民権運動や女性の権利拡充を主張するフェミニズムの象徴として歌い継がれた

▼「俺に敬意を」と求める男性目線の原曲を女性の視点に反転させ、変革の時代の代表曲となった。暗殺されたキング牧師の葬儀では追悼曲として歌った

▼情感あふれる熱唱は晩年も衰えず、後の歌手に多大な影響を与えた。ファンキーな名曲「ロックステディー」を安室奈美恵さんがリメークカバーしたことで初めて知ったファンもいるはずだ

▼2015年、「ナチュラルウーマン」を歌い上げる姿に当時のオバマ大統領が感極まった場面は記憶に新しい。「彼女の声の中にアメリカの歴史を感じることができた。私たちの力や痛み、暗闇と光も」。前大統領の追悼の言葉には深い敬意がにじむ

▼半世紀前と比べ、マイノリティーをめぐる状況が十分に変わったとはいえない。多様性を認め、尊重し合う社会に近づくことが先人への「リスペクト」だと信じる。(田嶋正雄)