琉球料理の食材の中で、その王道を行くのが豚肉である。そこには無駄を出さずに滋養料理をつくり上げ、全てを食べ尽くすという奥義がある。肉身だけでなく、本土ではほとんど食べないミミガー(耳)はもちろん、豚血、ナカミ(胃)、肝臓、腸などほとんどの内臓を食べる。

いらすとや

 豚足を昆布、大根などとともに柔らかく煮込んだテビチは長寿食の代表である。このテビチやソーキ(あばら骨)に含まれる動物性繊維のコラーゲンは血管や骨を強化させ、血中コレステロールの上昇を抑制する効果があるとされる。足腰が強く、若さを維持している高齢者が多いのも、このコラーゲンのためだと言われている。また、コレステロール値が高過ぎると、動脈硬化を起こし、心筋梗塞につながるが、反対に低すぎると血管がもろくなり脳卒中が起りやすくなったり、抗気管支炎や抗感染症が弱くなったりする。それをコントロールしてくれるのもコラーゲンとされている。

 コレステロールには、善玉と呼ばれるHDLコレステロールと悪玉のLDLコレステロールがあるという。善玉は悪玉を排除し、自ら善玉を増やす効果もあるということである。ということは、悪玉を排除し、善玉を取り入れるような豚肉料理をすれば理想的ということになる。それを見事に解説してくれたのが、琉球大学名誉教授で元副知事の尚弘子博士であった。「沖縄の豚の調理法は、まず豚肉を丸煮して煮汁ともども一晩置き、白く固まったラードを全部すくい取ってしまうんですね。実はこれがとても大切なんです」。ラードにはパルミチン酸やステアリン酸、ラウリン酸などの飽和脂肪酸が多く含まれ、この脂肪酸は心血管疾患のリスク上昇と関係があるとされる。しかし、白く固まるラードを取り除き、汁の上に浮いて残る黄金色の脂はオレイン酸やリノール酸といった不飽和脂肪酸で、こちらは血管を強くし、コレステロール値を低下させることが知られている。

 沖縄の人たちは豚肉を多食するが、その多くがたっぷりの野菜や海藻、豆腐などと組み合わせて調理していて、そこに、琉球人の編み出した究極の豚の食べ方が宿されているのである。

 沖縄の人が摂取する豚肉の量は、一人一日当たり約100グラムであるのに対し、本土の人たちは約75グラムであるという。ところが、沖縄では一人一日当たりの豆腐の消費量は豚肉とほぼ同じ約100グラムで、断然トップの日本一である。

 沖縄の豆腐にはラッカセイでつくる「ジーマーミ豆腐」と、大豆でつくる「ゆし豆腐」、「島豆腐」がある。ジーマーミ豆腐は正月や晴れの日などでよく作られるが、ゆし豆腐と島豆腐は普段から食べている豆腐である。チャンプルー(炒めもの)や、ンブシー(ごった煮)、揚げものなどでよく食される。豆腐を固める前のゆらゆらとした柔らかいのがゆし豆腐、よく固めたのが島豆腐で、その性状に合わせて料理もつくり分けられている。

 「豆腐チャンプルー」、「豆腐のみそ煮」、「豆腐ぬかしーいりちゃー」、「ゆし豆腐そば」、「へちま豆腐汁」、アイゴの子の塩辛を角切り豆腐に乗せた「スク豆腐」、野菜の出汁だしで煮込んだ「豆腐ンブサー」、「豆腐とナスの炒めもの」など、豆腐料理は枚挙にいとまがないほど多い。また発酵食品として有名な「豆腐よう」があるが、これについては別に記述することにする。(東京農業大学名誉教授)