疑いようもなく、標準的な常識と正義感は持ち合わせているつもりだった。だが、桃太郎を全面的に支持する正義が「父ちゃん殺されちゃった…」と泣く鬼の子に、殺す正義を伝えられるのかと言われれば、うつむくしかない。

「検察側の罪人」

 夫婦惨殺事件の被疑者の一人として挙がったのは過去の未解決事件で重要参考人だった男、松倉だった。誰も裁かれることもなく、理不尽な死を遂げた少女に思いをはせるベテラン検事の最上は、松倉を執拗(しつよう)に追い詰める。そんな彼を師と仰ぐ沖野は次第に、最上の捜査方法に疑問を持ちはじめる。 

 愛する者を奪われて「罪を憎んで人を憎まず」なんてきれいごとを言う自信はみじんもないが、復讐(ふくしゅう)はためらわれる。自分の中の正義と対峙(たいじ)させられる居心地の悪さを楽しんだ。(スターシアターズ・榮慶子)

 ◇シネマQとシネマライカムで上映中