島唄ポップスシンガー Lisa Okiさん(26)=うるま市出身

 BEGIN(ビギン)に憧れ、上京して3年。沖縄居酒屋のアルバイトから熱意と行動力で機会をつかみ、全国各地に音楽活動の場を広げてきた。今年3月にはBEGINと念願の共演。「空の上のオジーも喜んでくれたはず」。日々を支えたのは亡き祖父との思い出だった。

「夢は三線とともに世界中を旅すること」と語るLisa Okiさん=東京・代々木公園

 人見知りだった幼少期。稽古に向かう2人の姉の背中を追い掛けて三線を始めた。誰よりも喜んだのは父方の祖父、安喜(あんき)さん。「うちの家系から三線弾きが出た」と何本も三線を贈ってくれた。幼い孫たちが拙い手つきで弦を弾く光景を目を細めて見守ってくれた。

 姉2人がやめた後も稽古を続け、当時、県内の高校生で初の教師免許を獲得し脚光を浴びたが、「パティシエになる夢は譲れない」と卒業後は製菓店へ。それでも祖父は「お前の大事な夢だから」と背中を押してくれた。

 製菓店を退職後、知人の誘いもあり、プロとして舞台を任されるように。BEGINやザ・ブームを中心に平和を願う島唄ポップスのカバーを歌い続ける中で「沖縄の外から歌を通して平和を発信したい」という思いが膨らんだ。上京が決まる一方、心残りが一つあった。祖父の反対だ。「そばで歌を聴いていたい」という祖父に「すぐ帰ってくるから」と握られた手を解いて、海を渡った。

 「オジーのためにも成功したい」と目標に向かい寸暇も惜しむ日々を送っていると、母からの電話が。「落ち着いて聞いてね。オジーが亡くなったよ」。言葉が出なかった。あんなに元気だったのに。布団に横たわる祖父の顔を見ながら「そばにいればよかった」と悔やんだ。悲しみを打ち消すように歌に全てを注いだ。それでも一つだけ歌えない曲があった。それは「三線の花」。「あまりにもオジーと重なってしまって」

 全国で実績を重ね、念願だったBEGINと共演を果たした。ライブ後の打ち上げで勇気を出して「三線の花」を披露した後、比嘉栄昇さんからこう言葉を掛けられた。「罪悪感でしか歌っていないだろ。もうオジーは許しているよ」。はっとすると同時に、心のわだかまりが一気に晴れた。

 「ずっと償いの歌だったけど、今ではオジーからの応援歌に聞こえるようになった。きっと見ていてくれるはず」。今年5月に初のミニアルバムをリリース。テーマは身近な人への愛情だ。「私は家族からあふれる愛をもらってここにいる。身近な人に幸せを運ぶことが平和につながっていく」。愛を歌に乗せて、今日も三線を奏でる。(小笠原大介東京通信員)(東京報道部・西江昭吾)=連載・アクロス沖縄<94>

 【りさ・おき】 1992年、うるま市出身。5歳で三線を習い始める。中部農林高で三線の最高賞、教師免許を獲得。2015年から拠点を東京へ。FMラジオのパーソナリティーのほか、17年にオリオンビール60周年ソング「ソウセイ」の収録に参加。18年3月にはスカパー音楽祭でBEGINと共演を果たした。今年5月にミニアルバム「おもいうた」をリリースした。