尾根に残った樹木の緑と土砂崩れでむき出しになった山肌の茶色が幾何学模様のように広がる、見たことのない光景である。
管内のすべての電力が止まる「ブラックアウト」は国内初といい、交通機関の混乱など都市機能に深刻な影響を与えた。
北海道で最大震度7を観測した地震の被害が徐々に明らかになってきた。
これまで確認された死者は18人、心肺停止2人、安否不明19人。警察や消防、自衛隊などが夜通しで救助に当たっているが、生存率が下がるとされる「発生から72時間」が迫っている。一刻も早く不明者を見つけ出してほしい。
地震により道内全域で起きた停電は、8日中にはほぼ復旧する見通しという。しかし大規模な停電が起こるリスクは残っており節電を呼び掛けている。加えていまだに断水が続く地域もあるなど、住民は疲労の色を濃くしている。インフラの完全復旧に向け、政府や関係機関はあらゆる手段を講じてもらいたい。
6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、9月の台風21号。今年に入り、自然災害が続発している。
大阪では住宅4万棟以上が被害に遭い、西日本では227人が犠牲となった。数日前の台風では関西空港が閉鎖に追い込まれ、利用者ら約8千人が孤立した。
過去に例のない規模の水害や数十年に一度の災害は、地球温暖化など異常気象との関連が指摘される。
これまでの延長線上でない緊急事態に、どのように備えればいいのか。
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この夏、全国知事会議は、平時の予防対策から復旧復興までを担う「防災省」創設を政府に求める提言をまとめた。現在、内閣官房と内閣府が中心となり省庁横断的に実施している災害対応を一括して担う官庁の新設だ。
大規模災害の頻発に加え、南海トラフ地震や首都直下地震など巨大地震を見据えた知事たちの切実な声である。
訴えの根底にあるのは、これまでの政府の災害対応の遅れや非効率な取り組みへの危機感、多くの職員が2年程度で異動するため専門性が身に付かないなどの不満だ。
政府の地震調査委員会は南海トラフ巨大地震が30年以内に起こる確率を70~80%と予測している。土木学会はその際の経済的被害を1410兆円とはじきだす。
巨大災害で甚大な被害が及べば地域は消滅しかねない。強力な調整力と司令塔機能を持った組織の構築は不可欠だ。
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7日、告示された自民党総裁選でも防災対策は争点として急浮上している。
立候補を届け出た安倍晋三首相は気象変化に対応できる国土強靱(きょうじん)化を訴え、石破茂元幹事長は経験と教訓の蓄積・共有が大事だとし防災省の新設を唱える。
東日本大震災からの復興政策を統括する復興庁は2020年度末で廃止される。間もなく始まる後継議論の中で、「防災大国」の備えとして一元的組織の検討も進めるべきだ。