昨年、全日本マスターズ陸上の走り幅跳びで大会新記録を樹立し優勝したお年寄りが沖縄県今帰仁村湧川にいる。今年カジマヤーを迎えた仲松榮一さん(96)。「跳ぶことが好きなだけ」と笑みを浮かべる。

マスターズ陸上で走り幅跳びの大会記録を出した仲松榮一さん(右)と三男の弓寿一さん=今帰仁村湧川

 小学生の頃は祖父母、両親、きょうだい8人で暮らしていた仲松さん。兄と2人で、道なき道を歩き水くみに行くのが日課だった。「登校が早く成績も優秀だったので学校ではいつも表彰されたよ」と懐かしむ。

 大所帯で生計は成り立たず仲松さんは高等科卒業と同時に、父と2人の伯父と共にブラジル移民として出稼ぎに。コーヒー栽培で実家へ仕送りを続けた。「先の大戦でブラジル移民はいじめられた。コーヒーを出荷してもお金の支払いはなく、ほんのわずかな前金だけ渡されることも度々あった」と振り返る。

 仲松さんは24歳で5歳年下の千代さんと結婚。30歳で古里に戻った。農業や大工、大阪での出稼ぎで子ども8人を育て上げた。「泥棒以外の仕事は何でもしたな」と話す。

 小学生の頃は運動会で走っても特に速いわけでもなく「鉛筆1本もらったことがない」という仲松さん。ブラジルにいた頃は、移民たちが参加する運動会で100メートル走に出場し12秒の好タイムを出した。

 古里に戻った後も35歳の時、国頭地区の陸上大会で高跳びに出場し1・45メートルの記録で3位入賞した。

 以降、しばらく陸上とは疎遠になっていたが昨年、和歌山県で開催されたマスターズ陸上に出場。走り幅跳びの95歳から99歳の部に出場して1・72メートルを飛び、大会記録と県記録を打ち立てた。

 「長男が申し込んだので、スパイクとユニホームを準備して臨んだ」と笑顔で話す仲松さん。農業を営む三男の弓寿一(やすかず)さん(65)は「いつも畑に出て体を鍛えている。家でじっとしていない自慢の父」と目を細める。

 最愛の妻千代さんは5年前他界したが「人間は暗い気持ちになったらいけない」と仲松さん。「同い年の人より元気でいたい」と満面の笑みを浮かべた。(玉城学通信員)