金融機関が全国的に、テロ組織への資金供与やマネーロンダリング(資金洗浄)などの犯罪に対する対策強化を迫られている。国際機関FATF(ファトフ)が来秋の審査で「日本はハイリスク国」と結論付ければ、日本の金融機関は外貨の取り扱いが難しくなるという。県内では琉球銀行(川上康頭取)が、窓口でより多くの書類提示を求めるなどチェック強化を始めた。銀行の犯罪対策は世界的に「善意」から「義務」へ転換期を迎えており、日本でも顧客の理解が不可欠となる。(政経部・平島夏実)

琉銀から海外送金する際の必要書類

 ファトフは、世界35の国・地域などでつくる国際機関。日本の金融業界に対し、口座開設時や海外送金時の「本人確認が不十分」として、たびたび「イエローカード」を出してきた。イタリアやスペインは、マフィア対策の経験値があるため比較的高く評価されている一方、「日本は、お客さまを『いらっしゃいませ』と迎えるサービス精神が裏目に出ている」(県内地銀幹部)。来秋のファトフ第4次審査まで、金融庁が全国の銀行を回り調査や指導に当たる。

 とはいえ、具体策は各行とも手探り。金融庁がガイドラインで示したのは「ルール」ではなく「考え方」のため、現場レベルで考える必要があるという。

 琉銀が参考にした事例の一つが、ことし発覚した不正送金事件。経済制裁の対象となっている北朝鮮へ、愛媛銀行からみずほ銀行、香港の恒生(ハンセン)銀行、さらにペーパーカンパニーを経由して計5億円が不正送金されていた。依頼主は、大阪支店に口座を持つ会社経営者。愛媛銀行は「なぜわざわざ愛媛から送金するのか」と疑問を持ったものの、照会した大阪支店や税理士から「身元に問題なし」との回答があったという。さらに顧問弁護士から「海外送金をストップしたために送金先の海外会社の資金繰りが悪化すれば、訴訟を起こされかねない。送金すべきだ」と助言されたという。

 海外送金は、いろいろな詐欺のリスクを抱える。架空の貿易取引、投資話、国際入札への参加を持ち掛けるものや、インターネットで知り合った相手が国際結婚の費用や重病の手術代などを装って要求する場合もある。

 事件を踏まえて琉銀は9月、海外送金の際、送金目的を記入した依頼書だけでなく裏付け書類(学費であれば授業料の請求書や在籍証明書など)の確認を始めた。9月下旬以降は、県外法人が口座を開設する際、県内に事務所があることの証明書類(公共料金の領収書など)が新たに必要で、提出がなければ、事務所を訪問してペーパーカンパニーでないことを確認する。

 一方「書類を取りに戻って面倒だった」(県内貿易会社)、「あれこれ詮索されている気分」(留学中の子どもに送金する母親)など、戸惑いを感じる利用者もいる。琉銀リスク統括部は「犯罪対策の国際化か、利用者の利便性担保か。銀行自身もせめぎ合いだが、ご理解をお願いするしかない」と話している。