事実上の首相を選出する自民党総裁選で安倍晋三首相(総裁)が石破茂元幹事長を破り、連続3選を決めた。

 任期は2021年9月までの3年間。第1次内閣を含めると、首相在職日数は19年11月に歴代トップに並び、最長政権が視野に入る。

 安倍首相は主要派閥の支持をいち早く取り付け、国会議員票で8割超を獲得した。だが、国民世論に近い党員・党友の地方票は石破氏が約45%を奪い善戦。国会議員票も想定より伸ばした。

 石破氏が訴えた「政治の信頼回復」や「地方創生」が共感を得るとともに、経済政策「アベノミクス」の効果が地方に及んでいない不満を裏付ける数字であろう。

 行政や政治の公平・公正性で疑義が消えない森友、加計学園問題を巡る議論は総裁選でも乏しく、首相は自身や昭恵夫人に対する疑惑を拭うことができなかった。

 「安倍1強」政治は国会審議でも丁寧な議論を避け、最後は数の力で法案を押し通す強引な手法が続いている。官僚は忖度(そんたく)してか、公文書の改ざんまでしている。

 首相は長期政権がもたらしているおごりとゆがみを猛省すべきである。

 安倍陣営は総裁選で激しい締め付けをした。石破派の斎藤健農相が、安倍首相を支援する国会議員から「石破氏を応援するなら、農相の辞表を書いてからやれと圧力を受けた」と告発した。

 敵と味方を峻(しゅん)別(べつ)し、異論を許さない「安倍1強」の本質であり、それを警戒する人たちの批判票でもあろう。

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 首相は記者会見で、最終任期の目標として掲げる憲法改正について「次の国会に改正案を提出できるよう一致団結して向かわなければならない」と前のめりだ。9条への自衛隊明記をはじめ、自民党の改憲4項目を秋の臨時国会に提出する構えである。

 だが国民と安倍首相との乖(かい)離(り)は激しい。共同通信社が連続3選を受けて実施した全国緊急電話世論調査によると、秋の臨時国会に党改憲案の提出を目指していることについて「反対」と回答した人は51・0%に上り、「賛成」の35・7%を上回った。

 安倍内閣が最優先して取り組むべき課題は「年金、医療、介護」「景気や雇用など経済政策」「子育て・少子化対策」が上位を占め、「憲法改正」は8番目にすぎない。

 世論は改憲を優先課題とは考えていないのである。

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 辺野古新基地建設を巡る論戦は交わされなかった。

 石破氏は公式サイトで沖縄への米軍基地集中は「(本土の)反基地闘争を恐れた日米が米国の施政下にあった沖縄に多くの海兵隊部隊を移したからだ」と説明。地理的優位性を否定し、政治的理由であることを指摘した。防衛相経験者の本音だが、削除したため全く議論にならなかった。

 県の埋め立て承認撤回を受けて安倍政権は知事選が終わるまで様子見を決め込んでいる。安倍首相は「謙虚で丁寧な政権運営」を繰り返した。謙虚で丁寧とは、民意に反して新基地建設を強権的手法で強行することでない。