小生は、本紙に連載された久利計一氏のエッセーに関心を抱き、読み続けてきた。幸い本書の発行で再び読書を重ねる機会に恵まれた。再読をするほど含蓄のある内容に引かれた。特に、うちなぁ見聞録の第1回「『粛々と』という言葉」では、久利氏のこれまでの人生経験や人との出会いの中から湧き出た言葉を強く認識させられた。文章中に久利氏は「どんなに飾り立て、包み隠しても言葉は話す人の精神・行動を表す」と明記している。日常の言動への問題提起をされている感がしてならない。「粛々」の言葉の重みを強烈に感じた。 

沖縄タイムス社・1296円/くり・けいいち 1947年神戸市生まれ。70年、株式会社マイスター大学堂代表取締役、ザ・ファースト会長就任。KOBE三宮・ひと街創り協議会会長。美ら島沖縄大使

 読者の1人として多くの方々に、この本の逹読(書き手の思想、心情を正確に読み取るとともに、それに対して読み手の思想、心情を確立する読書行為)を薦めたい。文章量も適量で一気に読める。各項目の文に内在する久利氏の崇高な学識や表現力と思考の深さに感銘させられる。読み進めると摩文仁で「島守の塔」に祭られている、沖縄戦末期の官選知事だった島田叡氏の人間愛や精神風土そして歴史的背景を知ることができる。

 久利氏の若者へのマイスター制度を通した人生・職業・学業についての助言は、関係者にとって参考になると思う。芸術作品を媒体とする街創りも示唆に富んでいる。美ら海水族館や島守の塔での現場体験の児童の心理描写は心が洗われる思いだ。温かい人間味あふれる表現内容は、久利氏ならではと実感した。それから、日本画家で京都市立芸術大学特任教授の大野俊明氏の挿絵は、久利氏の文章と相関し、読書の味を倍加してくれる。

 沖縄の人々の優しさ、自然の豊かさと魅力、歴史の重み等を知り、沖縄をこれほど愛した神戸の街衆が、神戸の初詣で「私たちの美ら島に幸あれ」と祈る友愛の文意に心が熱くなる。

 久利氏の文章を読む時、文章の文字が起き上がり小生と対話している感がする。実に不思議な本である。この本が沖縄県と兵庫県、さらに他府県との交流が深まる媒体になればと念じている。(吉川安一・名桜大学名誉教授)

沖縄に学ぶ―神戸からの「うちなぁ見聞録」
久利計一
沖縄タイムス社
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