県知事選は30日の投開票日まで1週間を残すのみとなった。

 走りながら体制を整える超短期決戦ということもあって、一般の有権者からは「選挙が見えない」という声をよく聞く。

 確かに選挙戦のスタイルは大きく様変わりした。

 一昔前に実施されていた複数の候補者による立会演説会は、政策の違いを知るまたとない機会だったが、動員合戦の弊害が表面化し、廃止された。

 法定の選挙ポスターの掲示が認められるのも公営掲示場所だけになった。

 新聞社やテレビ局が主催する候補者討論会は、候補者の事情で開かれなくなった。

 知事選をめぐる有力候補者2氏による討論会は、今のところ、日本青年会議所沖縄ブロック協議会主催と県政記者クラブ主催の2回しか開かれていない。

 「選挙が見えない」という指摘は、こうした事情を反映したものだろう。

 候補者の政策や人となりを知る機会が少ないというのは、決して好ましいことではない。

 表の選挙運動は見えにくくなったが、しかし、水面下の活動は活発だ。

 とりわけ、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)を推す国政与党の自民、公明、維新は所属の国会議員を動員し、関連する企業や団体などにしらみつぶしに支援を要請するなど「ステルス作戦」を徹底している。

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 ステルスには「隠密」とか「こっそり行う」という意味がある。新基地建設問題を争点からはずし、期日前投票を徹底することによって、組織票を確実に積み上げていく戦術だ。

 2月の名護市長選では、この作戦が奏功した。同選挙の当日有権者数に占める期日前投票の割合は、44・40%に達した。

 今やどの陣営でも「期日前対策をしっかりしないと選挙に勝てない」という見方が定着しつつある。だが、期日前投票がやみくもに増えれば選挙戦が形骸化しかねない。

 弁護士有志は19日、「投票用紙に候補者名を記載した場面を撮影して報告を求める企業があるとの情報がネット上で流れている」として県選挙管理委員会に対応を求めた。

 事実だとすれば、憲法で保障された「投票の自由」や「投票の秘密」に抵触しかねないケースである。

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 菅義偉官房長官が、今月に入ってすでに3回も来県しているのは、知事選に敗れた場合、安倍政権に深刻なダメージを与えるからである。

 それだけに、政権や国政与党の取り組みは尋常でない。ステルス作戦を展開する佐喜真陣営に対し、前衆院議員の玉城デニー氏(58)は、翁長雄志前知事の後継者であることを前面に押し出す。

 選挙結果は、新基地建設の行方を決定づけ、沖縄政治の将来を左右するだけでなく、選挙制度のあり方や中央と地方の関係など、さままざまな分野に影響を与えるだろう。