安倍政権が文字通り総力を挙げて支援する佐喜真淳氏(54)と、「オール沖縄」勢力が推す手作り感漂う玉城デニー氏(58)の戦いは、「象とアリの戦い」を思わせるものがある。

 政権によるテコ入れは、その規模と徹底性において、過去のどの知事選をも上回る。

 沖縄基地負担軽減担当を兼ねる菅義偉官房長官は、今月に入ってすでに3度も来県し、石垣市や宮古島市にも足を延ばした。

 告示前の総決起大会には自民党の二階俊博幹事長、公明党の山口那津男代表、日本維新の会の馬場伸幸幹事長がそろい踏みした。

 小泉進次郎衆院議員もすでに2回、沖縄入りしている。

 安倍政権が死に物狂いの選挙戦を展開しているのはなぜか。その理由はただ一つ。辺野古移設などの基地問題を抱えているからだ。

 なのに、候補者の佐喜真氏も、基地負担軽減を担当している菅氏も、辺野古移設をまともに取り上げない。

 知事選は、両陣営が辺野古移設について正面から論じ、主張の違いを分かりやすく提示し、有権者の判断を仰ぐ機会である。そうあるべきだ。 翁長雄志前知事が命を削って辺野古問題に取り組んできたことを思えば、知事選で翁長県政への評価と辺野古の是非を語らないのは、あまりにも不自然であり、有権者に不誠実である。

 語るべきことを語らない選挙は有権者に目隠しをして投票させるようなものだ。

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 名護市長選で、政権が推す渡具知武豊氏が当選したとき、菅氏は「選挙は結果がすべて」だと言ってのけた。

 安倍晋三首相は、市長就任6日目に渡具知氏に会い、激励した。

 名護市長選、知事選、衆院選、参院選で辺野古反対派が相次いで勝利したときはどうだったか。

 安倍政権は選挙結果を完全に無視し、翁長氏の当選後、およそ4か月も面談を拒み続けた。

 敵・味方の論理に基づく敵視政策は、安保政策をゆがめ、地方自治をいびつにする。

 沖縄タイムス、朝日新聞社、琉球朝日放送が22、23の両日実施した情勢・世論調査によると、基地問題に対する安倍政権の姿勢について、63%が「評価しない」と答え、「評価する」は14%にとどまった。

 基地負担軽減担当の菅官房長官は、この現実に向き合い、選挙戦を通して丁寧に県民に説明する責任を負っている。

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 「普天間の危険性除去」「一日も早い閉鎖」という主張は両候補とも一致している。県議会は全会一致で「海兵隊の国外・県外移転」を決議した。公明党と渡具知氏も名護市長選で政策協定を結び、「海兵隊の県外・国外移転」を確認した。

 こうした積み重ねを踏まえて、さらに議論を深めるまたとない機会が知事選だ。

 もっとも大切な「説明責任」と「情報開示」が不十分なまま、事あるごとに「辺野古が唯一」だと主張するのは印象操作というほかない。