社会生活を営む上で、人とのさまざまな付き合いを避けることはできない。そしてそこには大概、酒と料理を介しての社交や贈答があり、古くからのしきたりがあった。ここでは人の生涯につきまとう人生儀礼としての琉球料理の奥深さを『沖縄の食事』(農文協)を参考に述べる。

サーターアンダギー

 まず「出産」である。子が生まれ、安産で母子ともに健やかであると確認すると、その日のうちに親戚や近所に知らせて祝いをする。大きな鍋に「産飯(ウバギーメ)」(白飯か小豆飯)を炊き、おむすびにして神仏に供える。その時の料理は産飯、豚肉と昆布と大根のお汁、田むじ汁(田芋<ターンム>の薄皮をむいて、これと豆腐と豚肉でみそ汁にする)である。

 出産後の母親にはおかゆとたて汁(みそと削ったかつお節、生卵、おろしシュウガを混ぜて熱湯をかけたもの)、ゆし豆腐、芋のほか、母乳が出るようにとパパイアを入れた豚肉の汁も出し、これらを1日三度食べさせる。

 出産後7日目は満産祝(マンサンスージ)と言って、親戚や部落中から人が集まり、三味線に合わせてにぎやかにカチャーシーを踊る。料理は豆腐、芋、昆布、大根などの煮付けを芭蕉ばしょうの葉にのせて出す。その後、子の「初歩き」でも料理を添えて祝う。

 息子や娘が「婚約」した時の食事は「酒盛(サキムイ)」と称し、結納の式を行う。その際、婿むこ方に感謝を込めて餅を贈る。その後日、婿方が泡盛やごちそうを持参して両家の親戚の「顔合わせ」をする。その時のごちそうは結び昆布、揚げ豆腐、てんぷら、かまぼこ、豚肉煮しめなど。大きな角盆に入れ、昆布で囲んで大きな風呂敷に包み、頭にのせて運ぶ。

 嫁方ではそうめん汁の吸いものや赤飯を出す。「婚礼」は、ニービチ(ご祝儀)として7品の料理を準備する。赤かまぼこ、カステラかまぼこ、結び昆布の煮しめ、豚肉の煮しめ、白アンダーギー(塩味のてんぷら)、サーターアンダーギー(小麦粉の揚げ菓子)などである。

 宴席での料理は朱塗りの漆器に盛る。豚肉入りぞうすい(または鶏飯)、中味(豚内臓)の吸いもの、イナムドゥチ(短冊切りの豚肉、かまぼこ、シイタケを入れたみそ汁)、そうめんの吸いものを出す。

 クーブイリチー(せん切り昆布油炒め)、ンスナバースネー(ふだんそうのあえもの)、砂糖煮豆などの小鉢。大皿には、先の7品に加えて赤寒天、花いか(紅色に染めた飾り切りのいか)、花麩(はなふ)、みぬだる(豚肉の薄切りに黒ごまだれをまぶしたもの)などが出される。

 このように、全てを琉球料理でつくり、ご先祖様に祝儀を報告し、親族や隣近所、青年会、婦人たちが集まって二人の門出を祝う。

 「葬儀、法要」も親族、子孫、集落の住民総出で執り行う。僧侶は呼ばない。家族の食事は肉類、魚、色の付いたものは一切使わず、豆腐、大根を使った一汁のみである。煮もの、炒めもの、漬けものも出さない。ナンカ(周忌)には料理した豆腐や昆布、白い粉をまぶした丸餅を重箱に詰め、その二組を供える。その後、ハチナンカ(初七日忌)、シンジュウクニチナンカ(四十九日忌)の後、一年、三年、十三年、二十五年、三十三年忌が行われる。

 精進料理は驚くほど品数が多く、花麩、田芋と揚げ豆腐の煮含め、酢のものは大根、にら、きくらげなどを刻んだものにマーミナ(もやし)を加えたもの、揚げ豆腐を入れたみそ汁、白飯などである。

 さらにまんじゅうとようかん、黄尊糕(チースンスコウ)、白尊糕(パースンコウ)、鶏卵糕(チールンコー)、桃菓子(ムムグヮーシ)、花ボール、薫餅(クンペン)、牡丹糕(ブタンコー)、白餅などを供する。これらの料理の数々を見ると、いかに祖先の霊に心を込めているのかがよくわかる。