本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授(76)が今年のノーベル医学生理学賞に決まった。米テキサス大のジェームズ・アリソン教授(70)との同時受賞である。

 授賞理由は「免疫反応のブレーキを解除することによるがん治療法の発見」。「世界で年に何百万人もの命を奪うがんとの闘いで、本庶氏の発見に基づく治療法が著しく効果的だと示された」と評価された。

 日本人の2人に1人ががんにかかる時代である。日本だけでなく世界のがん患者に希望を与えるものだ。その先端を切り開き、最高の栄誉に輝いた本庶氏の功績をたたえ、喜びを分かち合いたい。

 本庶氏の研究チームは1992年、異物を攻撃する免疫細胞の表面でブレーキ役として働くタンパク質「PD1」を発見。がん細胞がPD1と結合すると、免疫細胞の働きにブレーキをかけていることを突き止めた。

 ブレーキを解除し、免疫にがんの排除を続けさせるのが治療薬「オプジーボ」である。日本では2014年に皮膚がんの治療薬として承認され、肺がんや胃がんなどに拡大した。今や世界で使用されている治療薬となっている。

 「がん免疫療法」は手術、放射線照射、抗がん剤に続く「第4のがん治療法」といわれる革新的なものだ。手術や抗がん剤の効かない患者にも大きな効果を発揮してきた。がんの種類を問わずメカニズムが共通しているためだ。

 臨床の治療薬開発に結び付いた好例だが、基礎研究の重要性を改めて認識したい。

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 「重い病気から回復し『元気になったのはあなたのおかげ』と言われると、研究の意味があったと思い、何よりうれしい」

 本庶氏は会見で、こう喜びを表現した。

 京都大免疫ゲノム医学のウェブサイトの冒頭に本庶氏は「六つのC」を掲げる。

 「好奇心」を大切に「勇気」を持って困難な問題に「挑戦」。必ずできるという「確信」を持ち、全精力を「集中」させる。諦めずに「継続」することで、時代を変革するような研究を世界に発信する、との内容である。英語の頭文字が六つのCである。

 自身のモットーであるとともに、後進の研究者への励ましでもあろう。

 本庶氏は時代を変革するような業績を挙げ、自らお手本を示した。そのエールに応え、多くの若者が困難な問題に立ち向かう研究の道に入ることを期待したい。

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 年間1千万円以上かかるとも言われる高額な医療費の問題や、誰にでも効果が出るわけではなく事前に見極める方法がまだ確立されていない。大腸や肺の炎症といった副作用が出るなどの課題も残る。

 政府が基礎研究へ投入する予算が少ないことは歴代ノーベル賞受賞者が指摘していることだ。本庶氏が会見で「基礎研究から応用につながることはまれではない」と発言したのもその懸念からである。

 政府は応用研究に偏る予算配分ではなく、長期的視点に立って基礎研究を支援する体制を整える必要がある。