写真家の長濱治さんが沖縄の表現者102人の肖像を撮影した写真集「創造する魂」(ワイズ出版)をこのほど発刊した。「もともと琉球王国だった沖縄。人々が持つ独特の気配や感性には一瞬たじろく」という長濱さん。写真集は2015年に急逝した美術家、真喜志勉さんとの親交から生まれた。

真喜志勉(撮影・長濱治)

妻の伯父が元県知事の島田叡氏という長濱さん。「次に沖縄に来た時は島田さんが歩いた場所をたどって撮りたい」と話す=那覇市・沖縄タイムス社

「創造する魂」(ワイズ出版)

真喜志勉(撮影・長濱治) 妻の伯父が元県知事の島田叡氏という長濱さん。「次に沖縄に来た時は島田さんが歩いた場所をたどって撮りたい」と話す=那覇市・沖縄タイムス社 「創造する魂」(ワイズ出版)

 撮影は14年8月、親友の真喜志さんを撮影してスタート。16年1月まで6回に分けて行われた。真喜志さん死去後は被写体が被写体を紹介した。102人は写真家の石川竜一さんや石川真生さん、美術家の山城芽さん、石垣克子さん、唄者の堀内加奈子さん、仲宗根創さん、ミュージシャンのかっちゃん、下地イサムさん、新良幸人さん、ダンサーのI-VANと幅広い。ほかデザイナーや調理師、三線職人、工芸家、琉球舞踊家、芸人など沖縄を拠点にさまざまな分野で表現する人々の「魂」を写した。

 名古屋市生まれの長濱さんは1960年代彫刻を学ぼうと多摩美術大に入学した。校庭で真喜志さんに「長濱君、君もウチナーンチュか」と声を掛けられたという。「何だよ、それって聞いたら、『ヤマトゥーだなー』って言われて、それが出会い」。ジャズにブルース、軍の放出品、現代アート。米国文化に傾倒していた2人は話が弾み、連れ立って遊ぶようになった。

 長濱さんは卒業後、彫刻よりカメラに魅力を感じて渡米。ヒッピーや反戦運動を間近に見ながら、貧困層で大型バイクを乗り回すアウトローのバイカー集団「ヘルズ・エンジェルス」を撮りたいと引きつけられた。帰国後、真喜志さんに電話で報告すると、言われた。「長濱、オキナワもアメリカだ、見に来いや」

 67年、パスポートを持って来沖。真喜志さんが飛ばす車に乗って、沖縄中を巡った。基地内に黒人街、売春宿。「本土では感じない清濁合わせたカオスのように煮えたぎっていた。真喜志とも通じるものがある」。何度も通い、72年には初の写真集「あつく長い夜の島」を発刊した。

 フリーランスで活躍する長濱さん。2005年から肖像写真集の連作を刊行している。第1部のタイトルは「猛者の雁首」。一緒に米国を旅して出版物もある北方謙三さんはじめ、安藤忠雄さんや永六輔さん、江夏豊さん、大橋巨泉さん、角川春樹さん、加納典明さん、山崎努さん、山下洋輔さん、山本寛斎さん、横尾忠則さんと著名人100人を写した。「十数人は亡くなって、遺影になったよ」と振り返る。

 第2部は「THE TOKYO HUNDREDS 原宿の肖像」。高橋五郎さんや藤井フミヤさん、小泉今日子さん、スチャダラパー、綾小路翔さんら100人を撮った。

 14年、3作目として沖縄を撮影できないかと考えた。真喜志さんに電話をかけると、「沖縄は若い創造者が面白いんだ。俺に任せろ」と二つ返事だった。

 今回の写真集には72年の写真集の写真も挟んだ。50年前、辺野古の海に流れ着いたガスマスクとウイスキーの空き瓶をふざけて持つ真喜志さんの肖像も収められている。

 発刊後の今年7月、真喜志さんの家を訪れ、写真集を仏壇に供えた。「キザな言い方なんだけど、この写真集は真喜志にささげるレクイエム(鎮魂歌)なんです」(学芸部・吉田伸)