社説

社説[65歳以上雇用]働く意欲わく仕組みを

2018年10月8日 08:12

 先細る働き手を増やす改革は待ったなしだが、働く意欲につながる改革でなければ、「生涯現役社会」は掛け声倒れに終わる。

 安倍政権の成長戦略をまとめる「未来投資会議」で、現行65歳までとなっている継続雇用の義務付けを70歳まで引き上げる検討が始まった。2020年の通常国会に関連法案の提出を目指すという。

 13年に施行された改正高年齢者雇用安定法は、「定年延長」「定年制の廃止」「継続雇用制度の導入」のいずれかで、企業に希望する全員を65歳まで雇用するよう義務付けている。政府はこのうち継続雇用制度を70歳に引き上げたい考えだ。

 狙いは、労働力の確保と社会保障費の抑制。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、働き手の中核となる15~64歳の「生産年齢人口」は、15年の7728万人から65年には4529万人まで落ち込む。社会保障制度を支える現役世代が急激に減っていくのである。

 政府は公的年金の受給開始時期を、70歳以降も選択できるようにする検討も進めている。現在、年金受給開始年齢は原則65歳、本人が申し出れば60~70歳の間で選択できるが、それを70歳以降に広げようというのだ。

 そもそも高年齢者雇用安定法の改正は、年金財政の悪化を背景に、厚生年金の受給開始を段階的に65歳に引き上げることに伴うものだった。

 元気なシニアが仕事をバリバリこなすことに異議はない。ただ65歳以上雇用の流れが、受給開始年齢の一律引き上げ議論につながらないようくぎを刺しておきたい。

■    ■

 高齢化に伴い、労働力人口に占める60歳以上の割合は既に2割を超え、「働けるうちはいつまでも」と考える人が増えている。

 その一方で、高年齢者雇用安定法が義務付ける65歳までの雇用に関し、実際に希望すれば65歳まで働ける企業は全体の約75%にとどまっている。

 再雇用制度など受け皿整備が進む企業にあっても、給与が大幅にダウンしたり、経験のない部署に配置されるなど、処遇面の問題も少なくない。

 企業の側が、高齢者を正社員に取って代わる都合のいい働き手とみなしているとしたら制度の趣旨に反する。

 継続雇用年齢の引き上げに当たっては、現行制度がどのように運用されているのか、労働者視点に立った点検が必要だ。

■    ■

 安倍晋三首相は3選を果たした自民党総裁選で、生涯現役社会を掲げ、「いくつになっても生きがいをもって働くことができる社会を」と訴えた。

 人口減少が進む中、経験を積み、専門性を磨いてきた高齢者は貴重な人材である。人件費の増加を懸念する声も聞こえるが、高齢者の能力を生かすことが企業の成長にもつながっていく。

 働き方の幅を広げ、意欲を維持できるような人事評価や報酬体系の整備など、新たな制度づくりに官民で知恵を出し合ってもらいたい。

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