つい最近、東京の自宅マンションの掲示板で「ネズミ相談会」の張り紙に気付いた。「ネズミの被害でお困りの方は専門の相談員が聞き取ります」。はて、築年数が浅い建物なのにネズミ? けげんに思いながら、その場を通り過ぎた

 ▼理由はこれだった。紆余曲折の末、開場した東京・豊洲市場。それに伴い、解体が始まった築地市場の敷地内に住み着いた数千匹とも言われるネズミの拡散が懸念されているのだ

 ▼住んでいる所は、隅田川を挟んで築地の対岸。橋や川を渡れば逃げて来るのもたやすい。程近い銀座の繁華街に出没するかもしれないという。市場移転がこんな形で波及するとは思いもよらなかった

 ▼平面で開放型施設だった築地と違い、豊洲は立体構造で外気を遮断した閉鎖型。生ものを扱う上で、ネズミの入り込む隙がない衛生面は利点に挙げていいだろう

 ▼「世界一じゃない。世界唯一ですよ。匹敵するものはほかにない」。料理評論家の山本益博さんはかつて築地をこう評した。全国から魚が集まり、目利きのプロがさばく。「日本の台所」と呼ばれ、世界に認知された「ブランド」は新天地で一歩を踏み出した

 ▼そういえば沖縄でも魚市場の移転でもめている。互いに言い分はあろうが、市場は食文化を支える地域の財産。禍根を残さないよう歩み寄ってほしい。(西江昭吾)