9月30日を境に「風」が大きく吹き始めたという。

 豊見城の新しい市長に、「オール沖縄」勢力が推す前市議の山川仁氏が決まった。

 今年に入り南城市を除く市長選で4連敗中のオール沖縄にとっては、勢いを盛り返す足掛かりとなる当選だ。安倍政権と対峙(たいじ)する玉城デニー新知事にとっても、辺野古新基地建設阻止に向け追い風となる勝利である。

 玉城氏が知事選で大勝した余韻の中での市長選だった。

 知名度の高い現職の宜保晴毅氏と市議の半数以上が支援する宜保安孝氏に保守が分裂したとはいえ、三つどもえの戦いを大差で制した最大の要因は「デニー効果」である。翁長雄志前知事の遺志を引き継ぐ玉城氏を知事に押し上げた風に乗ることに成功したのだ。

 玉城知事は出発式や総決起集会に駆け付けたほか、遊説にもたびたび加わった。ウチナーグチを交えた巧みな演説で有権者を引き付け「流れを止めてはいけない」と訴えたのだ。ビラなどには翁長氏の生前の言葉を多用し「弔いムード」も味方につけた。

 豊見城は村時代の1998年に保革で争った村長選以降、保守系首長のかじ取りが続いている。今回、山川氏の推薦には革新政党が並ぶが、山川氏自身は保守・中道の議員らでつくる政策集団「にぬふぁぶし」の副幹事長だ。

 当選後「翁長前知事の思いを受け継ぎ、玉城知事を支えながら、約束した公約を実現したい」と喜びを語った。保革の枠を乗り越えた体制による新たな市長の誕生である。■    ■

 那覇のベッドタウンとして人口増が続く豊見城市は、住民の平均年齢が38歳と若い。

 山川氏が公約の柱に据えた、高校までの医療費無料化や習い事への助成、待機児童ゼロ、豊崎中学校建設などは子育て世代をターゲットにしている。

 これら政策への支持は、子育て支援ニーズに対するサービス不足への不満の裏返しであり、変化を求めた有権者の期待でもあったのだろう。

 市が実施した調査で市民の7割以上が市外・県外出身だという結果が出ている。通勤・通学で昼間人口が少ないのも豊見城の特徴という。

 今後進むであろう高齢化を踏まえれば、共助による街づくりも大きな課題だ。

 他方、山川市政を支える与党は圧倒的少数で、野党の協力なしに政策の実現は困難である。議会との新たな関係づくりにも注力しなければならない。

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 新基地建設と直接関係のない首長選で苦戦してきたオール沖縄勢力は、今回の勝利で再び自信を取り戻し、困難な状況から抜け出しつつある。県議会で審議中の新基地建設の賛否を問う県民投票実施にあたってもプラスの材料となるはずだ。

 14日告示された那覇市長選は自公などが推薦する前県議の翁長政俊氏とオール沖縄勢力が推す現職の城間幹子氏の一騎打ちとなっている。

 玉城氏からもらったバトンをさらに城間氏へつなぐことができるのか。県都の戦いがオール沖縄復調の鍵を握る。