社説

社説[消費増税]その前に将来展望示せ

2018年10月17日 07:28

 安倍晋三首相は、消費税率を予定通り来年10月に8%から10%に引き上げる方針を表明した。

 増税分の一部を幼児教育の無償化など全世代型の社会保障改革に充てるとともに、財政健全化も確実に進める、と安倍首相は強調する。

 すでに法律で決まっているものをあえてこの時期に明言したのはなぜか。小売店などの準備を促すとともに、景気対策を強化する狙いがある。

 安倍首相は2014年11月、消費の落ち込みが回復しないことから増税の延期を表明し、衆院を解散した。

 この時、「2度目の増税延期はしない」と断言していたにもかかわらず、参院選を控えた16年6月、再び延期を表明した。根拠の乏しい選挙対策的な再延期だった。

 こうした経緯があるだけに、事業主も消費者も、安倍首相の増税方針に対して半信半疑だった。

 来年10月の税率引き上げと同時に軽減税率が導入され、飲食料品などの税率は8%に据え置かれる。だが、レジの買い換えなど現場の軽減税率対策は、ほとんど進んでいないのが実情だ。

 安倍首相は、消費の冷え込みを防ぐため大がかりな景気対策を指示した。

 景気対策はもちろん重要であるが、増税を国民に求めながら、その一方で、ばらまき型の公共事業が増えれば財政健全化は遠のく。

 社会保障と財政に関する議論を尽くし、持続可能な公平感のある社会保障の将来像を示すことが何よりも重要だ。

■    ■

 消費税は低所得者の負担が重いという逆進性がある。低所得者の負担軽減を図るために導入されたのが軽減税率であるが、その中身は複雑だ。

 コンビニやスーパーなどの飲食料品に対しては軽減税率が適用される。飲食料品を持ち帰ると軽減税率が適用されるが、コンビニやスーパーのフードコートなどで店内飲食すると外食とみなされ、10%の消費税が課される。

 持ち帰りか店内飲食か、会計のたびに客に確認するのはあまりにも煩雑である。

 現場に過重な負担を強いるような仕組みは改めるべきである。

 経済に与える増税の影響を抑えるため、中小の小売店で購入した額の2%をポイント還元する案も打ち出された。 ただし、ポイント還元はクレジットカードやスマートフォンの利用客が対象となっており、受益者が限定され、低所得層の救済策とは言い難い。

■    ■

 本をただせば消費増税は、12年に民主(当時)、自民、公明の3党が合意した「社会保障と税の一体改革」で打ち出されたものである。社会保障改革と財政健全化を同時に追求する、という構想だった。

 安倍政権の2度にわたる増税延期で財政健全化は遠のき、社会保障の将来像に関する合意形成も進まなかった。

 増税の前提となる「身を切る改革=無駄の排除」も進んでいない。

 富裕層に対する課税強化など、税制の公平性の議論も避けて通れない。消費増税の前にやるべきことは多い。

前の記事へ 次の記事へ
沖縄関連、今話題です(外部サイト)
JavaScriptをOnにしてください
アクセスランキング
ニュース 解説・コラム
24時間 1週間