琉球王国時代から沖縄に伝わる伝統将棋「象棋(チュンジー)」が、県内で小学生を中心に少しずつ人気が高まっている。中国発祥の盤上遊戯だが、駒(タマ)の名称や決まり手などの用語にしまくとぅばが使われるなど、沖縄で独自の発展を遂げた。象棋普及会代表の仲村顕さん(45)は「象棋にまつわるしまくとぅばを収集し、保存と継承のため記録を残す必要がある」と指摘する。(社会部・湧田ちひろ)

吉川正一さん(左)に教わりながら、象棋(チュンジー)の対戦をする長田児童クラブの子供たち=10日、那覇市長田

仲村顕さん

吉川正一さん(左)に教わりながら、象棋(チュンジー)の対戦をする長田児童クラブの子供たち=10日、那覇市長田
仲村顕さん

 象棋は7種類16個の持ち駒で、日本将棋のように王「将・帥(ヲー)」を詰むゲーム。仲村さんによると、中国将棋「象棋(シャンチー)」が15世紀以前に琉球に伝来したとみられ、首里城跡からも三つの象棋駒が発見されている。

 ゲームの用語や道具の名称にはしまくとぅばが多く使われる。最初に先攻と後攻を決めるため、沖縄式のじゃんけん「ブーサー」でゲームを開始。陣地の手前中央部分は「城(グスク)」、陣地中央のスペースは「河(カーラ)」と呼ばれる。

 相手と自分の将・帥の間に他の駒がない状態を差す「対面将」は、しまくとぅばで正面という意味のタンカーから「ヲータンカー」とする。また、同じ局面が何度も繰り返される「千日手」は「シーケーサー」と言い、シー(する)とケーサー(返す)が合わさった。

 仲村さんは「独特の言葉が残り、ウチナーンチュの感性が分かるような表現もある。しまくとぅばを保存する必要性がある」と話す。

 道具も沖縄で作られる過程で独自に進化した。沖縄では駒を打つ際に音を鳴らすことが楽しまれ、黒木(クルチ)で作られた駒にはくぼみを付けて大きな音が出るよう細工されているという。

 戦前は広く親しまれたが、戦後は愛好家も高齢化し、一時は数十人程度に減少した。象棋の記録を現代に残そうと、仲村さんは2011年、入門解説書を出版。小学生でも理解できるように読み仮名を打つなど工夫を凝らした。

 最近では、同様に危機感を抱いた愛好家が講師となり、児童館や学童クラブなどで象棋が広がっている。

 琉球象棋童子クラブ会長の吉川正一さん(82)も普及に尽力する一人だ。これまで約40カ所の学童クラブを回り、千人以上の子供たちにボランティアで指導してきた。

 「ブーサーシー」。那覇市の長田児童クラブでは毎週水曜日、児童のじゃんけんの掛け声と象棋の駒を打つ音が響く。小学1年から5年生まで25人の児童が在籍し吉川さんから象棋としまくとぅばを教わっている。

 上間小2年の大嶺保人さん(7)は「最初はルールを覚えるのが難しかったけど、今は得意。相手に勝つのが楽しい」。同小5年の運天瑞稀さん(10)は「次の対戦ではこうしようとか、いろいろと作戦を考えられるのが面白い」と象棋に熱中している。

 吉川さんは「誰かが伝えないとなくなってしまう。象棋はしまくとぅばの継承にもつながるので、子供たちに残していきたい」と笑顔で話した。