出張時に佐賀県各地で開かれている「肥前さが幕末維新博覧会」を観覧した。メイン展示がある幕末維新記念館で幕末の佐賀藩主・鍋島直正、大隈重信ら同県出身の「七賢人」の業績が紹介されている

▼意外なのは明治時代を美化するコーナーがなかったことだ。背景には1874年の「佐賀戦争」で敗れた江藤新平らの存在があるようだ。一時は明治政府の中核にいた人物が、形式的な裁判で死刑判決を受け、即日斬首された。悲劇的な人生からか、今も人気は高いという

▼江藤は早くから三権分立の重要性を唱えた。中でも司法の独立を強く訴え、初代司法卿(法務大臣)就任後には記者の裁判傍聴を認め、開かれた司法を推進したとされるから皮肉な最期というほかない

▼ことしは1868年の明治改元から150年の節目で、23日には政府の祝賀式典が東京で開かれた。「琉球処分」以降の歴史的背景からか、沖縄では「喜びに堪えない」と首相が式辞で述べたような祝賀ムードはなかった

▼戊辰戦争を戦った福島県や新潟県での催しは「戊辰戦争150年」をうたう。朝敵だった過去の歴史を見つめ直すためだ。一面的な明治礼賛にくみしない矜持(きょうじ)が感じられる

▼歴史は重層的で多面的なものだ。時の政府の「敵」もまた、日本の歴史をつくってきた。そのことを忘れない視点が必要だ。(玉城淳)