ウチナーンチュと、日米の「クォーター」というルーツを、見た目と芸で鮮明に打ち出した異色のお笑いコンビ「ありんくりん」。8月の「アグレお笑いバイアスロン2018」(主催・琉球朝日放送)は、しまくとぅばを基本とした芸風に、初めて太鼓や三線を取り入れ「チャンプルーのお笑い」で敗者復活戦からの初優勝をつかんだ。2人は「うまいことをしようとせず、県民を喜ばせたいという原点に戻れた結果」と、結成5年目の確かな手応えを感じている。(中部報道部・篠原知恵)

2018年の「お笑いバイアスロン」で初優勝し、喜ぶクリスさん(右)とひがりゅうたさん=那覇市・タイムスホール

「平和祈念公園に行きなさいとか、りゅうたから沖縄を学ぶたくさんの宿題を出されてきた」と明かすクリスさん。好きなしまくとぅばは「わんがむるはらいーさー」=25日、那覇市前島・よしもとエンタ-テイメント沖縄

「沖縄の人たちが笑っているのを見るのが楽しい」と話すひがりゅうたさん。好きなしまくとぅばは「わんねーひんすーむんやしが、まーさむんじょーぐー」という=25日、那覇市前島・よしもとエンターテイメント沖縄

2018年の「お笑いバイアスロン」で初優勝し、喜ぶクリスさん(右)とひがりゅうたさん=那覇市・タイムスホール 「平和祈念公園に行きなさいとか、りゅうたから沖縄を学ぶたくさんの宿題を出されてきた」と明かすクリスさん。好きなしまくとぅばは「わんがむるはらいーさー」=25日、那覇市前島・よしもとエンタ-テイメント沖縄 「沖縄の人たちが笑っているのを見るのが楽しい」と話すひがりゅうたさん。好きなしまくとぅばは「わんねーひんすーむんやしが、まーさむんじょーぐー」という=25日、那覇市前島・よしもとエンターテイメント沖縄

 琉球絣姿に立派なひげを蓄えてしまくとぅばを操る北中城村出身のひがりゅうたさん(26)、クリッとした目が特徴的で父は米国人、母は日米のハーフという沖縄市出身のクリスさん(25)のコンビ。

基地もネタに

 優勝したコントは三線の達人(ひがさん)に、外国人(クリスさん)が見た目や言動に反して「うますぎる」太鼓の演奏で弟子入りを迫る内容。クリスさんが、復帰運動で歌われ、最近は新基地建設への抗議現場などで知られる曲「沖縄を返せ」を歌う場面はひときわ大きな笑いを呼んだ。ひがさんのせりふは全てしまくとぅばだが、県外の審査員をして「言葉が分からなくても笑えた」と言わしめた。

 過去に、軍用地の借用書をひっさげた米兵役のクリスさんが、ひがさん演じるウチナーンチュの男性に娘との結婚を迫るネタもあった。

 米軍基地問題に切り込むかに映るが「実はそんな知識もないし、あまり考えずにおもしろいと思ったのをしている。はたから見たら笑えないことも、実際にクリスとやると沖縄の人はめっちゃ笑ってくれる」とひがさん。クリスさんも「本物のクォーターだから笑えるんでしょうね。僕は生乾きの臭い洗濯物を香りづける柔軟剤のような存在」と語る。さすがに会場を冷やした「失敗」ネタも幾度かあったが「やっと配分が分かってきた」という。

先輩らの背中

 2人が追うのは戦後沖縄の娯楽をリードして県民を元気づけた照屋林助さん、小那覇舞天さんの背中だ。

 クリスさんからお笑いをやろうと誘われたひがさんが、20歳のころ芸風を模索する中で知り「さまざまなことを乗り越えた笑いに、直感で魅力を感じた」という。幼い頃からしまくとぅばは「当たり前の存在」。ペンキ職人の父親や仲間から自然と「リスニング」で覚えてきた。

 だが他方のクリスさんは「しまくとぅばは無縁の環境。アメリカ意識で洋楽ばかり聞いていた」という。

 6年前、ひがさんが2人の初舞台に選んだのは北中城村喜舎場で、観客は地元の高齢者たちだった。「クリスにおじい、おばあが笑うのを見せたかった」。しまくとぅばを使い、不発弾を扱ったネタに笑い転げる高齢者の姿を見て、2人は「これはいけるな」と確信。より芸を深めようと、林助さんの息子の林賢さんが率いる「りんけんバンド」の熱烈な追っかけとなった。

ずっと沖縄で

 時間を見つけてはネタをみてもらい、林助さん、林賢さんが舞台冒頭で長年使ってきた「とぅんじたるむんやー」というあいさつを「ありんくりん」用につくってもらった。「うれしくて、俺たちが沖縄のお笑いをやらなきゃって使命感が出た。今風に表現していきたい」と2人。

 優勝したバイアスロンで初挑戦した音楽を取り入れた「チャンプルーのお笑い」は、目指す林助さんらの芸風に近づく一歩でもある。

 ひがさんは「ネタからしまくとぅばが消えたら、なんか沖縄のお笑いっぽくない。生まれたところの言葉でずーっとお笑いができたらいい」、クリスさんは「やりたいことをひたすら自由にやりたい、あれもこれも。それがありんくりん!」と力を込めた。