世界的に大ヒットした歌手ファレル・ウィリアムスさんの曲「ハッピー」。ノリのいいサウンドと爽快感は曲名通り、人の心を幸せにしてくれるようで不思議だ

▼その曲を使用したトランプ大統領にウィリアムスさんが「待った」をかけた。米東部ペンシルベニア州ピッツバーグで起きたユダヤ教会堂での銃撃事件後に、大統領が支持者集会で無断で曲を流したことに抗議した

▼複数の銃器を持った容疑者が「ユダヤ人はみな死ね」と叫びながら侵入したというおぞましい事件。警察は憎悪犯罪(ヘイトクライム)として捜査を進めているが、根深い差別や武器がはびこる社会の現実をあらためて思い知らされた

▼トランプ大統領は遺憾の意を示しているが、地元への慰問にはユダヤ団体の一部が反発。これまでの大統領の言葉や政策が白人至上主義を鼓舞してきたと指摘している

▼「この国で起きた悲劇にハッピーなことはひとつもない」。ウィリアムスさんの言葉が響く。曲とは程遠い許されない悲劇と蔓延(まんえん)する差別主義への抗議の思いがあったのだろう

▼ウィリアムスさんはこれまでにも、トランプ大統領が掲げたメキシコ国境沿いの壁建設計画に反対する曲や警察官に射殺された黒人男性にささげる曲なども手掛けてきた。壁を砕きたいというメッセージが伝わってくる。(赤嶺由紀子)