社説

社説[「徴用工」訴訟]関係損なわない対応を

2018年11月1日 08:39

 日韓合意を根底から覆すばかりか、両国の友好関係にも影を落としかねない判決だ。

 太平洋戦争中に日本で強制労働させられた元徴用工の韓国人4人が起こした戦後補償訴訟で、韓国最高裁が日本企業に賠償を命じた。

 徴用の背景にあった日本の植民地支配を「不法」、企業が徴用工を働かせた行為を「反人道的な不法行為」とみなし、個人請求権は消滅していないと判断したのだ。これにより1人当たり約1千万円の支払いを命じた高裁判決が確定した。

 日本政府がすぐさま韓国側に抗議したのは、元徴用工の請求権は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決された」ことを確認しているからだ。

 盧武鉉政権時代の2005年には、韓国政府が請求権協定で提供された資金に強制連行の被害者への補償金が含まれていると表明するなど、「解決済み」との認識を改めて共有している。

 判決を受けて韓国政府は「司法の判断を尊重する」とのコメントを発表したが、協定を空洞化させ、解決のゴールポストを動かすようなことがあれば国際的信用は失われる。

 元徴用工らによる同様の訴訟は、一、二審で賠償命令が出されたものだけでも計11件。韓国に進出する企業は幅広く、このままでは日本企業の韓国展開や投資にも影響する可能性がある。

 新たな摩擦の原因となる前に、韓国政府は、その責任において必要な措置を講じるべきだ。

    ■    ■

 韓国政府が強制動員被害者と認定した人は約22万人に上る。うち軍人や慰安婦を除く「労働者」は約15万人。

 日中戦争により労働力不足が深刻化したことから、日本政府は植民地であった朝鮮半島にも国民徴用令などを適用し、工場や鉱山などの労働に駆り出したのである。証言などによると動員は半ば強制的で、約束とは違う過酷な労働を強いられたという。 

 元徴用工らは高齢となっている。今回の裁判でも原告4人のうち3人は既に他界。残された元徴用工の男性(94)は「一人で判決を聞くことになり胸が痛い」と語っていた。

 政府間で「解決済み」であることは間違いないが、元徴用工らの傷をどうしたら癒やすことができるのか。歴史の事実に謙虚に向き合う必要がある。

    ■    ■

 日韓両国の間には、旧日本軍の慰安婦問題や竹島の領有権問題などの懸案が横たわっている。

 しかし経済関係に直接打撃を与えるという意味では、徴用工訴訟が今後の大きな火種となりかねない。日本政府は、韓国が速やかに対応しなければ国際司法裁判所への提訴を含め、あらゆる選択肢を視野に対処するという。

 「日韓共同宣言」からはや20年。両国は相互理解と信頼に基づいて未来志向の関係を構築するという基本的な認識で一致している。

 冷静さを失わず、互いに知恵を出し合い、現実的な解決策を模索してもらいたい。

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