せわしく子どもを幼稚園に送り届けた朝、ホッとしたのもつかの間、社内の情報共有メールにため息をつく。「大浦湾ではフロートを砂浜に並べ始めました」。辺野古にいる同僚が工事再開を知らせていた

▼何度繰り返してきただろう。政府と県の集中協議、裁判の和解、埋め立て承認の取り消し、そして撤回。工事が止まるたびに胸をよぎるほのかな期待は、いつも陽炎(かげろう)のように消えた

▼テレビの全国ニュースは再開の事実を淡々と伝えている。辺野古反対の玉城デニー氏が大差で勝った知事選は、つい1カ月前。民意が無視されるという事態は、もはや大量消費されるニュースの一つにすぎないのか

▼対話を求める玉城知事に菅義偉官房長官が会うとしても、それは体裁を整えたにすぎないだろう。政府の強硬策の是非は再び国地方係争処理委員会に委ねられそうだ

▼前回の「取り消し」では結局白黒を決められず行司役としての存在意義が揺らいだ。今回も見込み薄とお思いの方は少なくないだろうが、あえて望みを託したい

▼前回から委員5人中4人が代わった。加えて、知り合いの法曹関係者は富越和厚委員長を「気骨のある人」と評す。東京高裁長官や公害等調整委員会の委員長を務め、見識は申し分ない。国におもねらず、問題の背景を精緻に見つめる采配を期待したい。(西江昭吾)