イギリス、ウェールズのジャーナリスト、ジョン・ミッチェル氏の「追跡 日米地位協定と基地公害-『太平洋のゴミ捨て場』と呼ばれて」は、沖縄の基地問題を再考させる「調査報道」からの警鐘だ。

岩波書店・2052円/ジョン・ミッチェル 1974年イギリス、ウェールズ生まれ。調査報道ジャーナリスト、沖縄タイムス特約通信員。明治学院大学国際平和研究所研究員、東京工業大学非常勤講師/あべ・こすず 琉球大学法文学部教授、国際関係論

 前書『追跡・沖縄の枯れ葉剤』では、退役米軍人への詳細なインタビューを基に、沖縄における枯れ葉剤の事実を明らかにしたミッチェル氏。今回は、米国の情報公開法で入手した1万2千ページの米軍内部資料と内部告発者の証言を駆使し、「地球でいちばんの汚染者」である米軍が、第2次世界大戦後も沖縄や本土に居座り続けることの問題をより広い射程で伝えている。

 米軍の妨害を乗り越えて入手した情報は、沖縄に配備された核や化学兵器と、事故で沖縄の土地に流れ出たポリ塩化ビフェニール(PCB)、ダイオキシン、PFOS(ピーホス)など有害物質の種類と量を暴きだす。ミッチェル氏は、その情報を、沖縄の人々が経験し、断片的な形で報道されてきた「被害」の実態につなげながら、それらが沖縄の「基地公害」のわずか一部でしかないことをあらわにする。そして、日米安保や地位協定の下、汚染の事実を隠蔽(いんぺい)し続け、部下にさえもきちんと伝えない(無知をつくり出す)米軍の姿と、日本政府の弱腰と「無能さ」を指摘する。まん延する汚染の事実と隠蔽、無知と無能、危険にさらされ続ける環境と私たちの身体。「基地公害」の全体像が示されている。

 情報に基づくミッチェル氏の論点は明確だ。基地汚染は、沖縄の人、日本の人、米軍人を区別しない。基地汚染は人権侵害である。その論点に立てば、沖縄、日本における「米軍基地問題」を解決するための道はおのずと見えてくる。

 最後に、同著が、阿部小涼氏の丁寧な翻訳により、日本語で出版されていることの意味を考えたい。それは、沖縄、日本に住む私たちが当事者として現実を早急に知ることを最重視する、ミッチェル氏のジャーナリストとしての使命感を反映していると言える。ミッチェル氏と阿部氏が選んだ言葉「基地公害」。その実態と意味を、同著を通して今度は私たちが直視する番だ。(吉川秀樹・文化/応用人類学者、大学非常勤講師)

追跡 日米地位協定と基地公害――「太平洋のゴミ捨て場」と呼ばれて
ジョン・ミッチェル
岩波書店
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