「本物の開鐘(けーじょう)が沖縄を出て行くというのは大変なこと。いったいどんな経緯で決まったのか」▼2012年に横浜能楽堂(神奈川県)で開かれた展示会に、県立芸大所蔵の三線の名器・富盛開鐘が展示されることを報じた後、琉球古典音楽のベテラン実演家から、そんな声が寄せられた

▼貴重な文化財が簡単に県外に持ち出されては困る。運んでいる途中で何かあったら-。沖縄で作られ数百年も大切にされてきた三線を愛すればこその反応だった

▼沖縄の音楽文化の象徴ともいえる三線が国の「伝統的工芸品」に指定されることになった。全国で指定された230品目のほとんどは、衣食住に関わる織物や器などの日用品。選ばれる条件には「主として日常生活で使用する」との項目がある

▼なるほど、国内の伝統楽器でここまで庶民的で、日々演奏されている存在は例がない。子供からお年寄りまで、趣味で三線に触れる人は多い。エイサーや豊年祭の時季がくると、集落のあちこちでチンダミ(調弦)が始まる。日常生活の中で響く「テントゥンテン」の音は、まさに日用品だ

▼安価な県外産に押され、年間販売量の2割弱にとどまっているという県産三線。指定で認知度が高まれば、匠(たくみ)の技をそなえた逸品が市場でしっかり評価され、時代を超え愛用される新たな名器が誕生することだろう。(玉城淳)