知り合った記者や研究者が自著をくれる時がある。プロの仕事には敬意を表したい。なるべく代金を払うようにするが、価値を理解できない分野だと、もらってしまう場合もある。どうすべきか、毎回悩む

▼対価は著作権から発生し、作者の死後も保護される。ただ、土地のようにずっと相続はできず、50年で消滅する。その後作品は自由に利用され、新たな創作を刺激する仕組み

▼ネット上の電子図書館「青空文庫」が例の一つだ。著作権がなくなった作品を順に文字入力し、無料で公開している。どこにいても名作が読める

▼先週、環太平洋連携協定(TPP)の年内発効が決まり、著作権の保護期間は米国並みの死後70年に延びることになった。延びた分の今後20年間、青空文庫は新しい作家の作品を収蔵できない

▼作者の収入と自由な利用をどう調和させるか。正解のない難問に独自の立場を取るのが、昨年沖縄を訪れた世界的アーティストのテオ・ヤンセンさん。立体作品を空気の力で動かす。自身が発見した仕掛けを公開している

▼結果、世界中で作品が増殖し、アイデアが進化している。その過程を楽しそうに見守る。誰でも最初は人に伝えたいことがあって作品を発表する。著作権、知的財産権は複雑な問題だが、シンプルな原点に立ち返らせてくれる魅力的な逸話だと思う。(阿部岳