米ニューヨーク国連本部で10月16日、前代未聞の事態が起きた。米政府がキューバの人権状況を批判しようと開いた会議で、米国を非難する怒号が巻き起こり、議事が進行できない事態が生じたのだ。オバマ前政権の融和政策から強硬路線へ転じたトランプ政権が、国際社会で孤立している姿が浮き彫りになった。

 今から約54年前、米国とキューバが国交断絶後、米国に亡命したキューバ系の多くは「フィデロ・カストロ政権が崩壊するまでは国交回復せず、経済制裁を続けるべきだ」と主張。米政府は、こうした強硬派のキューバ系を重用し、経済制裁を維持してきた。

 しかし、冷戦終結とソ連の崩壊でキューバが経済危機に直面すると、在米キューバ系の意識も変化。祖国を助けたいと考える若い世代が増加し、1999年の世論調査では「国交回復に賛成」が「反対」の約2倍と形勢が逆転。それまでイデオロギーや安全保障の観点から論じられてきたキューバ政策の論点が経済へシフトしたことで新たな流れが生まれ、米政府に政策変更を求める声へつながった。

 こうした変化を受け、オバマ氏は2008年の大統領選で、対話によるキューバとの国交正常化への意欲を表明。13年から水面下での対話を始め、翌年には中南米出身でスペイン語を話すローマ法王を仲介役に交渉を開始。15年に歴史的な国交回復を実現させた。

 世論の支持率は内政に確実に影響する。オバマ氏がキューバとの国交回復を国政に据える必要性を感じたのは、約180万人(10年国勢調査)のキューバ系米国人の世論の変化が、それまで「外交問題」と位置付けられてきた課題を米国の「内政問題」へと押し上げたからだ。

 沖縄の米軍基地問題は、多くの米国民には自分の生活に直結しない「外交問題」。しかし、在米ウチナーンチュと協働すれば、「内政問題」に変えることも可能かもしれない。

 米国に住む沖縄系は家族に米軍関係者がいる場合も多いことなどから、基地問題を避ける県人会は多い。しかし、父親が米兵の玉城デニー知事が自身のストーリーを語り、平和を訴えることで「家族に米軍関係者がいても、新基地反対を唱えていいんだ」という共感が広がるかもしれない。

 119年前のハワイを原点に根を広げたウチナーンチュは現在、全米に約10万5千人(16年県推計値)。世代交代も進み、活躍の舞台も学会やスポーツ界、ホワイトハウスに国連にハリウッドと多様だ。

 対話を拒否して国際社会から孤立するトランプ政権と、それに追従する日本政府は「辺野古が唯一」を呪文のように繰り返し、沖縄との対話に扉を閉ざす。

 そうした政府を変えうる草の根の外交力をどこに見いだすか。玉城知事が持つ可能性は、海外ウチナーンチュの可能性でもある。新たな時代を切り開くには、変化を生む「対話」が必要だ。(平安名純代・米国特約記者)