時給300円、月165時間の時間外労働、恒常的な暴行・脅迫…。法務省が今年発表した外国人技能実習生への「不正行為」には、数々の人権侵害事例が並ぶ

▼日本で知識や技能を学び、母国で生かす技能実習制度。政府は発展途上国に技術を移転する国際貢献だと説明するが、賃金不払いや違法残業が横行する実態を政府自身が報告している

▼実習生にも労働基準法や最低賃金法が適用される。厚生労働省が昨年、監督指導した5966事業所のうち7割超の4226事業所が残業時間や安全基準、賃金などで法令に違反していた。一部の悪徳業者による例外ではない

▼法務省によると昨年、失踪した外国人実習生は過去最多の7千人に上った。今年は6月までの半年間で4千人。2013年からの5年半で失踪者は3万人を超えた。「実習生」という名の実質的な労働者を違法状態で働かせた結果だ

▼外国人労働者受け入れ拡大の国会論議が始まった。限られた熟練労働者以外は家族帯同を認めないほか、日本人と同等以上の報酬は法案になく後に省令で定めるとする。使い勝手のいい安価な労働力という考え方が透けて見える

▼受け入れるのは血の通った人間だ。それぞれに生活や家族がある。現行の技能実習制度の矛盾を放置、温存したまま、受け入れ拡大の新制度創設は許されない。(田嶋正雄)