日本アカデミー賞新人俳優賞を2017年に受賞した県出身の佐久本宝が東京を拠点に映画、ドラマで多彩な役に挑み続けている。「演技、言葉の難しさに苦労しているけど、役の根底には共通する表現すべき思いがあることが少しずつ分かってきた」。初の映画でもがいた経験は現在の試行錯誤の日々の糧となっている。(学芸部・松田興平)

東京での役者生活を語った佐久本宝=那覇市・桜坂劇場

 16年の高校3年時に映画「怒り」(李相日監督)で銀幕デビューし、脚光を浴びた。監督から声をかけられ軽い気持ちで受けたオーディション。「誰と共演するかも知らず、ショートムービーだと思っていた」と振り返る。

 同作は吉田修一の同名小説が原作で夫婦惨殺事件を軸として展開する。佐久本は1200人の中から選ばれ、役を得た。共演は渡辺謙、松山ケンイチ、宮崎あおい、綾野剛、妻夫木聡ら。佐久本は沖縄を舞台にした重要なパートを森山未來、広瀬すずらと担った。素朴な日常の中で底知れぬ悪意に触れる高校生を熱演し、高評価を得た。

 佐久本は台本をいつも当日に渡され、せりふは現場で覚えた。撮影以外の時間は原作を読み込み、まだ渡されていない台本を想像。わずかなシーンのために船舶免許も取るほど、リアリティーを追求した映画だった。

 撮影から受賞までの日々を「自分がここにいていいのかな、といつも思っていた。何が何だか分からなかった」と振り返る。

 それまで高校卒業後は看護師になるつもりだったというが目標がリセットされた。

 無我夢中で一つの役に向き合うことが充実していたのだろう。「撮影が終わって、ぽっかり胸に穴があいて何も手に付かなかった。考え抜いて役者に挑戦することに決めた」

 卒業後に芸能事務所へ所属し、上京した。沖縄を出て2年目。現在までテレビドラマや舞台、映画とコンスタントに役を得ている。

 「怒り」で共演した森山や広瀬らとはつながり続けている。「森山さん、(広瀬)すずちゃんを始め、多くの人にずっと気に掛けてもらい、助けられてきた。特に李監督には自宅で寝泊まりさせてもらったこともあり、お父さんみたいに思っている」と感謝は尽きない。

 今でも自身の持ち味は「はっきりと分からない」と首をひねる。演出家たちから「センサーが良いとか言われるので、感受性を評価されている気がする」と説明する。

 高校生の時から自身を控えめに分析し、吟味した言葉で語っていた佐久本。今は、ただ謙虚だった高校生の時とはひと味違う姿勢で役にのぞんでいる。

 「僕は島の子で、根がシャイ。でも東京では主張しないと、周りの意見に食われていく。だから、どんどん自分をさらけ出している」。壁にぶつかる日々を充実した表情で語った。