人工知能(AI)が描いた絵の落札価格が43万2500ドル(約4800万円)。米競売大手クリスティーズが10月に発表したニュースは世界中の人を驚かせた

▼黒い服を着た男性と思われる人物の肖像画は、14世紀から20世紀に描かれた作品1万5千点のデータを基に生み出されたという。買った人は「秘密」なので、話題性と芸術性のどちらが購入動機なのかは残念ながら分からない

▼果たして、AIやコンピューターは芸術を生み出せるのか? これまでにもさまざまな試みがあった。日本では2016年にAIの書いた小説が文学賞の一次選考を通過し話題に

▼短歌では、530の語彙(ごい)と20種類の構文を組み合わせる短歌自動生成プログラムが存在し、架空の歌人「星野しずる」がインターネットで作品を発表している。例えばこんな歌。「臆病な流行(はや)り言葉をあきらめて浮かぶ吐息から飛び出した嘘(うそ)」。意味は良く分からないが、想像力がかき立てられる。芸術や文学を創造するのは人間固有の能力ではないのかもしれない

▼芸術鑑賞の楽しみには、未知の感動を知るという側面もある。知らない物を理解したいという気持ちは、新しい刺激を感受する喜びにつながる

▼AIが生み出したものからも感動や美を受け取れるか。その作品は、私たちの感性を進化させてくれる可能性を秘めている。(玉城淳)