社説

社説[入管法改正案]実習制度の点検が先だ

2018年11月11日 08:25

 岐阜県の縫製工場に勤めていた中国人女性は、最低賃金の半分にも満たない時給300円で夜遅くまで働かされたという。

 建設関係の技能を学ぶはずだったベトナム人男性は、通常より大幅に低い日当で除染作業に従事させられたと説明した。

 入管難民法改正案の審議入りを前に野党が開いた会合で外国人技能実習生が吐露したのは、不当な低賃金や長時間労働の実態だった。

 臨時国会の最大の焦点である入管法改正案は、これまで医師や大学教授など高度な専門人材に限っていた在留資格を、単純労働分野にも広げるものだ。

 とはいっても1993年に始まった技能実習制度で来日した実習生や、留学生のアルバイトなど日本で働く外国人は急速に増えている。

 政府は表向き単純労働の受け入れは認めないとしながら、労働力不足解消のため裏木戸からそっと外国人材を受け入れる手法をとってきたのである。

 技能実習生を巡っては、今年1月からの半年間で4279人が失踪していることが明らかになった。劣悪な待遇に耐えかねて逃げ出す人が後を絶たない。

 労働基準監督署などが昨年、監督指導に入った事業所の7割を超える4226カ所で実習生に対する違法残業などの違反も確認されている。

 さらに労災による死亡と認定された実習生が2014年からの3年間で22人に上った。日本の雇用者全体の労災死比率を大きく上回る驚くような数字である。

    ■    ■

 外国人を日本の企業や農家などで受け入れ、習得した技術を母国の経済発展のために役立ててもらう技能実習制度が、安価な労働力確保に利用されているという事実は否めない。

 そればかりか実習という名の下に、日本人が避けるような危険で過酷な労働の引き受け手になっているという現実がある。

 実習生は原則、職場を変えられない。母国の送り出し機関への支払いで多額の借金を抱えているケースも少なくない。雇用主に従わざるを得ないという構造的問題が、深刻な人権侵害を生んでいるのだ。

 新たな在留資格を設ける入管法改正案について、政府は臨時国会での成立を目指している。

 だが技能実習の問題を放置したまま受け入れ拡大にかじを切れば、不当労働や人権侵害も拡大しかねない。

    ■    ■

 入管政策の大転換にもかかわらず、閣議決定された入管法改正案は制度設計の不備が目立つ。

 法の根幹ともいえる受け入れ対象業種や規模が定まらないのは、いかにも「生煮え」。対象分野や求められる人材基準などの課題を、法案成立後に省令や運用方針などで定めるとするのは国会軽視である。

 日程ありきで使い勝手のよい労働力確保策に走るのではなく、人権保障に重点を置いた受け入れ策を時間をかけて構築すべきだ。

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