固有の伝統文化と風土の特性からか沖縄はかつて洋楽・洋舞の不毛の地といわれていた。しかし昨今の沖縄バレエ界の活動には目を見張るものがある。

南條喜久子バレエ研究所による「ジゼル」公演のワンシーン(同研究所提供、北村裕史撮影)

 沖縄のバレエ史は大正後期頃に始まるといわれているが、一般に認知されるのは今から70年前の戦後間もない1947年に首里に南條みよし舞踊研究所が開設されたのが嚆矢(こうし)といえる。この研究所の入門一期生だった南條喜久子氏らによって沖縄のバレエ界は草創期から今日の隆盛までけん引されてきた。

 草創期の沖縄の社会状況はバレエをゆっくり鑑賞する余裕のある人々は少なく、またトウシューズやバレエ衣装の入手も難しくバレエ・レッスンの環境は不備だらけだったが南條氏らはその困難を乗り越え営々とトウシューズを踏み続けてきた。

 沖縄のバレエ界に変化が表われるのは、本土復帰前後からで各地でバレエ研究所も多く開設され、沖縄洋舞協会や日本バレエ協会沖縄支部等の組織も確立され、発表会で演じられる内容も質・量ともに充実してきた。近年、バレエ公演会場はどの会場も満席・客層も以前とは全く違ってきた。私はテレビディレクター時代から今日で五十余年間沖縄バレエ界と接触注目し、多くの舞台公演を観(み)てきたが、近年のこの発展ぶりは真に想定外である。

 この躍進の背景には古典バレエの定番「白鳥の湖」や「眠れる森の美女」のような大作を着実に修練しスキルの高い演技力を見せる若手バレリーナたちが育ったこと、公演の舞台美術や音響・照明・コスチューム等々、舞台づくりシチュエーションが大きく変化したこと、またすばらしい創作バレエが次々に発表されていること等が大きな要因といえる。更に、50余年にわたる沖縄タイムス芸術文化振興事業に洋舞部門を設け奨励していることも後押しとなっている。

 私は今年も多くの洋舞公演を観た、どの公演でも感性を揺さ振る作品に出会ったが、中でも南条幸子バレエ研究所の「宇宙」という作品は秀逸であった。さて、いよいよ沖縄バレエ界の集大成ともいえるドラマティックバレエ「ジゼル(全幕)」の公演も近づいた。この公演には沖縄タイムス芸術選賞受賞者の若手バレリーナたちの俊秀たちが出演する。期待が高ぶるところである。