これもランナーズハイの一種なのか。NAHAマラソンのコース7キロ付近、豊見城市の嘉数交差点に参加者が一斉に踊りだす「振り付けポイント」がある
▼スピーカーから大音量で流れるダンスソング「YMCA」の振り付けに合わせ、参加者一体となって踊る光景は壮観だ。明るい曲調に乗り、年齢も性別も職業も超えて、仮装したピカチュウも、あまちゃんも、宮古島まもる君も一緒に踊りながら駆け抜けていく
▼仕掛け役は創作太鼓グループ「那覇太鼓」。10年ほど前から続け、今では参加者の間にすっかり定着した。「毎年楽しみ」という手紙も届くという
▼司会進行役の野底武光さん(39)が、振り付けをした後のジョガーたちに「無駄な体力をどうもありがとうございました」とアナウンスすると、どっと笑いが起こる。「みなさーん、大丈夫。残りはたったの35キロだ、イエーイ」の掛け声には、大勢が「イエーイ」と両手を挙げて笑顔で応える
▼コースを埋め尽くす笑顔が沿道にも伝わり、一帯が多幸感に包まれていく。この国内最大級の市民マラソンが、沖縄ならではの「祝祭」であることを、あらためて実感させられる
▼「苦しい表情よりは笑顔で走った方が楽しいから」と野底さん。シンプルな理由に、多くの人をひきつける大会の魅力が凝縮されている。(田嶋正雄)