破綻寸前の日産自動車をV字回復させた「カリスマ経営者」として知られるカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。

 2015年3月期までの5年間に計約100億円の報酬を受け取ったにもかかわらず、半分の計約50億円とうその記載をしていた疑いが持たれている。

 毎年10億円前後の報酬を受け取り、株主らから「法外」と批判されてきたが、実際はその倍近い報酬を得ていたことになる。

 ゴーン容疑者はなぜ過少申告したのか。税務申告は適正になされていたのか。組織的関与はなかったのか。

 上場企業に1億円以上の役員報酬を開示することを義務付ける制度は10年3月期決算から導入された。

 有価証券報告書で役員がどの程度の報酬を得ているかは経営の透明性を確保するものだ。長年にわたって報酬を過少申告していたのなら、株主や投資家の信頼を裏切るもので、悪質極まりない。

 日産では内部通報を受けて、数カ月にわたりゴーン容疑者らの不正行為について内部調査を続けたという。

 会見した西川広人社長は虚偽記載のほかに、会社資金の不正流用があることも指摘した。業務上横領や特別背任などの容疑も浮上してくる。

 特捜部にはゴーン容疑者が虚偽記載を始めた動機などを含め、事件の全容解明に全力を挙げてもらいたい。

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 ゴーン容疑者は資本提携したフランスのルノーから日産に派遣された。1999年に最高執行責任者(COO)となり、2000年に社長に就任。国内主要工場の閉鎖や大胆なリストラを断行し、経営を立て直した。「コストカッター」の異名を取った。

 西川氏は不正を見抜けなかったことについて「あまりにも1人に権限が集中していたのが誘因だ」と反省の弁を口にした。カリスマ経営者に物言えぬ企業風土になっていなかったか。取締役会や監査役が機能せず、ガバナンス(企業統治)とコンプライアンス(法令順守)に欠けたといわれても仕方あるまい。

 社外取締役を含む第三者委員会を立ち上げるというが、中立で独立した委員らで構成することが重要である。

 事件を引き起こした問題の根っこまで踏み込んで調査し、自ら公表することが説明責任を果たすことになると認識してもらいたい。

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 今回の事件では今年6月に導入された司法取引が適用された。日産側が特捜部に情報提供。捜査に協力する見返りに起訴を見送ってもらったり、求刑を軽くしてもらったりする制度である。事件に関わったとみられる法務担当の外国人執行役員らと司法取引が成立。捜査の行方次第では制度の試金石となろう。

 日産では出荷前の新車に実施する排ガスや燃費検査の測定結果を改ざん、完成車検査を無資格の従業員が行っていた不祥事が次々発覚した。今度は経営トップの逮捕である。日産は企業体質を根本から改めて出直す必要がある。