大手自動車メーカーを舞台に、創業家とたたき上げのトップの争いなどを描く経済小説「トヨトミの野望」(梶山三郎著)。優れた経営にも「負」の側面があることや巨大企業の成長の厳しさを見た思いがした

▼こちらは現実の話。日産自動車のカルロス・ゴーン会長(64)が、報酬約50億円を有価証券報告書に過少申告した疑いで逮捕された。企業価値を判断する情報をごまかしていたとすれば、株主や投資家、消費者をも欺く行為で許されるものではない

▼経営危機を回復させた「カリスマ」の逮捕に衝撃と驚きは大きいが、多くの疑問がつきまとう。不正行為が長期間見つからなかったのはなぜか。会社がつくる報告書に不正が放置された背景は何か

▼「ゴーン統制」によるひずみも指摘される。予想を大幅に下回った決算時には役員を事実上更迭した。不正検査問題では、会長が表に出て謝罪することはなかった。ワンマンぶりに不満もくすぶっていた

▼資金の私的流用などの疑いもあり、捜査の解明が急がれる。権限の集中が招いた結果なのか、組織的な関与はなかったか。立て直しに向けた会社の説明責任も求められる

▼不正検査やデータ改ざん問題でメーカーの信頼も揺らいでいる。コーポレートガバナンス(企業統治)が問われる今、信用をおとしめた責任は重い。(赤嶺由紀子)