12月のタイムス俳壇で比嘉聖佳さんが詠んでいる。〈茶の間にも機密のありや鷹騒ぐ〉。生活の場に迫り来る国家権力の不穏な動きに警戒の声を上げる
▼今月は特定秘密保護法を題材にした句が目を引いた。比喩や皮肉が反戦的だとして取り締まられた戦中の俳句弾圧事件と重なったのだろうか。「嫌な空気」を17文字に写し取った俳人が多かった
▼法案が国会に提出される前から反対の思いをブログにつづったのは俳優の藤原紀香さん。与党が衆院通過を強行して以降、吉永小百合さんら映画人、作家、音楽家が反対の声明に名を連ねた
▼秘密保護法をめぐっては、普段は政治的な活動から距離を置く表現者たちが次々とメッセージを発信した。社会が窮屈になって活動の場が狭まることに危機感を感じたからだと思う
▼この春の沖展でオスプレイをモチーフにした作品が多かったことを思い起こす。工芸の染色部門で機影を目にしたときはさすがに驚いた。あえて抽象的な表現を避けた作家たちから感じたのは、沖縄の現実に立ち向かおうという強い意志だ
▼表現者が存立する基盤は自由な社会である。デモをテロと一緒にするような政治家が運用する法律に不安がよぎるのは当然。反対の声を上げ続けなければ、「秘密というブラックホール」に自由がのみこまれる。(森田美奈子)